マイクロカプセルについて

〜製造法と用途〜

物質工学科4年 (22) 福丸貴己

法学 課題レポート

 

【目 次】

第1章 概論(文献の引用)

1.1. 序論

1.2. 製造法

1.2.1. 相分離法

1.2.2. 液中乾燥法

1.2.3. 融解分散冷却法

1.2.4. スプレードライング法

1.2.5. パンコーティング法など

1.2.6. 界面重合法

1.2.7. in situ重合法

1.2.8. 液中硬化被覆法

1.2.9. 界面反応による無機質壁マイクロカプセルの調整

1.3. 性質

1.3.1. 粒径分布

1.3.2. 膜浸透性

1.3.3. 表面のおや・疎水性

1.3.4. 生分解性

1.3.5. 電気的性質

1.4. 用途

1.4.1. 記録材料

1.4.2. 医学材料

1.4.3. 農業材料

1.4.4. 香料・化粧品

1.4.5. 食品

1.4.6. その他

 

第2章 本論(特許電子図書館の引用)

2.1. 製造法

2.1.1. 特開2001-097819,特開2001-097818および特開2001-096146より

2.1.2. 特開平11-319540より

2.1.3. 特開平11-188257より

2.1.4. 特開平09-024269より

2.1.5. 特開平05-269367より

2.1.6. 特開平05-007766より

2.2. 用途

2.2.1. 特開2001-219487より

2.2.2.  特開平10-287510および特開平05-238904より

2.2.3. 特開平10-258223より

 

第3章 特許データの検索

3.1. 検索方法

3.2. 検索結果

3.2.1. 特開2001-219487:紙製品の製造方法及び製造装置並びに紙接合用糊及び紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法

3.2.2. 特開2001-097819:マイクロカプセル及びその製造方法

3.2.3. 特開2001-097818:マイクロカプセル及びその製造方法

3.2.4. 特開2001-096146:マイクロカプセル及びその製造方法

3.2.5. 特開平11-319540:マイクロカプセルおよびその製造方法並びにそれを含有するゲル状組成物

3.2.6. 特開平11-188257マイクロカプセル製造

3.2.7. 特開平10-287510:有害生物防除マイクロカプセル剤の製造方法

3.2.8. 特開平10-258223:造粒体の製造方法

3.2.9. 特開平09-024269:リン脂質を使ったマイクロカプセル製造方法

3.2.10. 特開平05-269367:マイクロカプセル、その製造法およびその使用法

3.2.11.特開平05-238904:農薬マイクロカプセルおよびその製造方法

3.2.12. 特開平05-007766:マイクロカプセル製造方法

 

第4章 その他

4.1. 参考

4.2. 感想

 

1. 概論(文献の引用)

1.1. 序論

テキスト ボックス:  
図1.1.1. マイクロカプセル
 マイクロカプセル(microcapsule)は微小な容器である.すなわち,マイクロカプセルはそれを球とみなしたとき,径がマイクロメートル(μm=10−6m)領域にあるカプセルである.しかし,製法が原理的に同じであれば,径がミリメートル(mm=10−3m)あるいはナノメートル(nm=10−9m)額域にあるものもマイクロカプセルと呼んでいる.容器の壁膜をつくっている材料は主として天然及び合成高分子であるが,高分子でなければならない必然性はなく,ワックス類や無機化合物も壁材料として利用することが可能である.

 容器は,本来,物をしまっておくために考案されたもので,その役目は中身を必要なとき取り出して,使うまで汚したり傷めたりしないように保護することである.したがって,中身がいわば主役で容器は脇役であるが,この脇役がないと主役は十分に力を発揮できないのである.マイクロカプセルでも事情はよく似ており,芯物質あるいは核物質と呼ばれる中身を外部環境から保護する機能をもっているが,このほかに芯物質を外部に放出する速度を調節する機能をもっている.マイクロカプセルはこれらの機能をもつためにいろいろの分野で広く利用されている.

 マイクロカプセルを利用した世界最初の商品は,1950年代にアメリカのNCR社により市場に送り出された.すなわち,印字圧で発色する複写紙,いわゆる感圧型複写紙で,芯物質を使用時まで外部環境から保護するマイクロカプセルの機能が巧みに利用されている.ここで読者の注意を促したいのは,マイクロカプセルはこの商品以前に存在していなかったことで,この商品の開発過程ではじめて誕生し,しかも最初はこの商品のために意図的に創り出されたのではないことである.1939年にNCR社において複写紙開発のプロジェクトが開始されたとき,このプロジェクトにはいくつかの目的があったが,その一つはキャッシュレジスターから出るレシートがプリント用リボンの緩みのためしばしば判読不能になるのを改良することであった.このため,レシート用の紙にプリントに必要なすべての成分を含ませ,印字衝撃によって発色させることになった.いろいろの試みが失敗した後,感圧型複写紙研究チームがつくられた1946年以後は,染料前駆体を溶解した油をゼラチンを保護物質として水中に分散したエマルションが試された.しかしゼラチンの保護作用が不十分なことがわかり,コロイド科学に強い関心をもっていた研究チームのメンバーの提案でコアセルベートの利用が試みられ,いろいろの試行錯誤の後にマイクロカプセルが誕生したのである.との感圧型複写紙はノーカーボン紙とも呼ばれ,現在も非常に広く使用されているが,その後はマイクロカプセルを利用した商品が数多く市販されるようになり,また製造法もコアセルベーション法以外にも多数考案されている.

 マイクロカプセルの製法原理は,通常の指でつまめる大きさのカプセルの製法原理と異なる.すなわち,後者においては最初に容器をつくり,それに内容物を充填するが,徹小なマイクロカプセルを作るにはこの方式は適用できない.そこで芯物質を微粒子状にして適切な媒質中に分散し,次いで微粒子のおのおのに膜をかぶせて被覆する.前の過程は分散過程の一種で,これを効果的に行うためにはコロイド科学の知識と分散技術の成果を十分に活用することが要求される.後の過程はコーティング操作の一種であるが,マイクロカプセル化(microencapsulation)と呼ばれ,高分子科学,物質科学,コーティング技術に関する情報を有効に利用することが重要な成功のポイントとなる.マイクロカプセル化の方法は多数考案されていて,それらの大部分は特許化されているが,大別すると化学反応を利用する化学的方法,物理化学的変化を利用する物理化学的方法及び物理的ないし機械的操作を主に利用する物理的方法に分類できる.芯物質粒子/分散媒界面で高分子を合成すると同時に被覆用材料として利用する界面重合法は化学的方法の一種であり,芯物質粒子を分散させた高分子溶液中で相変化により生成したコアセルベート滴を,芯物質粒子表面に沈着させるコアセルベーション法は物理化学的方法に分類され,更にマイクロカプセル出現以前からコーティング法の一つとして利用されているスプレードライングは物理的方法の一つとも考えられる.

 既に述べたように,マイクロカプセルの主要な機能は芯物質を外部環境から保護することと芯物質を外部環境に放出する速度を調節することである.一見まったく別物に見えるこれらの機能は,実は同じ原因により発生したものである.すなわち,マイクロカプセルの壁膜が物質透過の障壁となっているため,外部環境から酸素,有機化合物,蒸気などの流入速度が非常に小さくなっており,また外部環境から芯物質溶出用に加えられた溶媒で溶かされた芯物質分子の外部への拡散速度が溶媒中の自由拡散速度に比して極めて小さいのである.マイクロカプセル壁膜さ壁材料実質部分と細孔部分から成っており,両者の割合は壁膜材料の種類,マイクロカプセルの製法とその条件,マイクロカプセル径などによって異なるので,これらの要因を変化させると芯物質の外部環境に対する安定性あるいは芯物質の外部環境への放出速度を任意に調節できる.

 マイクロカプセル利用例は多種多様であるが,利用されている機能の面から整理してみると以下のようになるであろう.芯物質を外部環境から保害する機能を利用したものには感圧型複写紙,圧力測定シート,感圧型接着剤,液晶表示材料などがあり,また芯物質の外部環境への放出速度を調節する機能を利用したものには持続放出性医薬品,持効性農薬などがあり,更に人工細胞,人工臓器などへの利用は両方の機能を同時に果たさせていると考えてよいであろう.

 動植物の細胞は天然のマイクロカプセルである.その壁膜,すなわち細胞膜や観胸壁は人工マイクロカプセル壁膜に比べるとはるかに複雑でしかも組織化された構造をもち,分子認識,能動的物質輸送,情報伝達,エネルギー変換,化学反応などの高次の機能を発現している.現存の人工マイクロカプセルにも 一部これらの天然マイクロカプセルの機能をまねたものがあるが,将来は更にこの傾向が大きくなり,多くの商品に高度の機能をもつ人工マイクロカプセルが利用されるようになるであろう.

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1.2. 製造法

 封入したい物質(芯物質)の物理化学的・生化学的性質及び使用する膜(壁材)の物怪,マイクロカプセル化する目的,すなわちカプセル化により,どのような機能を期待するのかによってマイクロカプセル化の方法はいろいろ異なり,いままでさまざまな方法が考案されている.極言すれば各製品に対して固有の方法があるといえないこともない).しかしながら公表されている数多くの例を詳細に検討してみると原理的にはいくつかの方法に分類できる.要はカプセル化したい芯となる物質の周りにどのように壁材となる物質をくっつけるかであり,方法としては芯物質界面への壁材物質の沈積を利用する場合と界面での反応を利用して皮膜を形成させる場合とに大別できる.前者を界面沈積法,後者を界面反応法とでも便宜的に名付ければ,従来の方法は表1.2.1のように分類できよう.

 

1.2.1. マイクロカプセル製法の分類

界面沈積法

界面反応法

 

相分離法、液中乾燥法、融解分散冷却法

界面重合法、in situ重合法、液中硬化被覆法(オリフィス法)

スプレードライング法、パンコーティング法

界面反応法(無機化学反応法)

気中懸濁被覆法(Wurster法)、粉床法

 

 この節では表に示した各方法の原理を述べ,典型的な実施例を,比較的最近の報文中から抜粋して紹介する.

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1.2.1. 相分離法

 高分子溶液はその環境を変化させることにより極めて濃厚な分散相と希薄な連続相とに分離することは古くから知られており,この現象をコアセルベーション(coacervation),生じる濃厚液滴をコアセルベート(coacervate)と称する.これらの述語は1930年代にオランダのBungenberg de Jongにより定義づけられ,生命の起源との関連で興味をもたれて研究が進展した.非生物的に生成した高分子物質が濃厚液滴に分離し,これから原始細胞が発生したというオバーリン説が著名である.

 このコアセルベートを芯物質を包む膜に応用したのがNCR社のノーカーボン紙である.それ以降さまざまな高分子の利用が検討されてきた.相分離は熱力学的平衡状態であり,相分離誘起剤を添加することによりいままで単一の分子として安定に存在していたものが不安定となり,会合によって系の自由エネルギーを低下させることに基づいて相分離が起こる.相分野法には1種類の高分子の相分離を利用するシンプルコアセルベーション法と2種以上の高分子を用いるコンプレックスコアセルベーション法とがある.繁用される高分子として,前者では水溶液系から相分離させるゼラチン,有機溶液系からのエチルセルロースがあげられる.後者においてはゼラチンとアラビアゴムとの静電気的相互作用を利用した組合せが一番利用されかつ研究されている.

1.2.1にゼラチンを皮膜とする代表的な調製法の模式図と相図とをテキスト ボックス:  
図2.1.1. シンプルコアセルベーション法およびゼラチンの相分離領域法
示す.相分離誘起剤としてエタノールを用いた例であるが,最初40〜45℃に温めた10%のゼラチン水溶液(相図におけるAの点)にエタノールを加えていき,エタノール濃度が45〜50%ぐらいになったときに相分離が起こる(相図の斜線部分).このコアセルベートが芯物質の周りに集合して皮膜となるわけだが,コアセルベート自体は容易に生成するものの,マイクロカプセル化の成否は,芯物質の周りにそれがうまく吸着するか否かにかかっている.これが芯物質の界面エネルギーに依存していることは明らかだが,いまだ具体的な指針が明確には与えられておらずトライアンドエラーに頼っているのが現状である.

 ゼラチンの分子量(30000〜60000),媒質のpH(2〜12),相分離誘起剤(MeOH,EtOH,2−PrOH,tert−BuOH,Dioxane,Na2SO4),芯物質の種類を変えてカプセル化の成否を検討した報文があるが,分子量の低いゼラチンのほうがコアセルベートはできやすく,ジオキサン,硫酸ナトリウムでは媒質のpHに影響されないが,アルコールの場合はアルキル鎖の短いほど影響を受ける.また,ゼラチンと親和性が高い芯物質ほどカプセル化が容易であると報告している.

 ゼラチンのシンプルコアセルベーションは非常に古典的な方法で,最近ではあまり用いられず,シンプルコアセルベーションとしては有機相からのコアセルベーションが多い.その例として,エチルセルロースとするテオフフィリンのマイクロカプセル化を図1.2.2に,及びその相図を図1.2.3に示す.石油エーテルはこの場合エチルセルロースに対する貧溶媒であり,30〜40%(v/v)の添加によりエチルセルロースのコアセルベートが生成してテオフフィリンの周りに集まる.これを集めてスラリーとなし,段階的に貧溶媒を増やして洗い,完全に良溶媒を除くことにより,皮膜を硬化させる.もちろんこの場合芯物質であるテオフィリンが石油エーテルに溶けないことが条件である.調製時の温度,分留温度の異なる石油エーテルの違い,石油エーテルの添加速度などが,コアセルベートの生成しやすさ,カプセルの粒径にどのように影響するかを調べているが,生成したマイクロカプセルの大きさは20〜500μmぐらいであり,調製温度の高いほうがカプセル粒径は大きくなると報告されている.次に,同じくエチルセルロースを皮膜とするアスピリンなどの医薬品をカプセル化した例を紹介するが,貧溶溶媒を用いずに温度を低下させることにより相分離を誘起させた例である(図1.2.4).得られたカプセルの粒径は平均260〜285μmであり,膜厚は10〜40μmと報告されている.この報文では貧溶媒を用いて調製したカプセルとの医薬品の透過性が調べられているが,温度コントロールにより調製したカプセルのほうが透過性が大きいと述べられている.詳細は不明だが,おそらく生成するコアセルベートの密度の違いによるものと考えられている.

 

1.2.2. 貧溶媒添加物によるエチルセルロースマイクロカプセルの調整

 

1.2.3. エチルセルロースの相図

 

1.2.4. 冷却によるエチルセルロースマイクロカプセルの調整法

 

 2種以上の高分子が静電気的相互作用,水素結合などにより会合して濃厚な相に分かれる現象を利用したものがコンプレックコアセルベーション法であり,しばしば,たんぱく質−多糖類、たんぱく質−たんぱく質,たんばく質−核酸,多糖類−核酸などの組合せが用いられる.その中で一番多用されているゼラチン−アラビアゴムの調製例を図1.2.5に示す.ポリアミノ酸であるゼラチンは等電点を持ち,溶液のpHによりその正味の電荷の符号を変える.一方,多糖の,強酸性解離基を持つアラビアゴムは,幅広いpH領域で常にその電荷の符号は負である.したがって,両溶液混合後に溶液のpHを酸性側に持っていくとポリマー間の静電気的引力により濃厚なポリマーコアセルベートが生成する.このコアセルベート生成領域はポリマー濃度の非常に小さいところなので温水を加えて希釈する必要がある.また,コアセルベーションは平衡系であり,温度や濃度の変化により容易にコアセルベートが消失してしまうので,カプセルを取り出すためには何らかの硬化方法が必要となる.

 

1.2.5. ゼラチン−アラビアゴムによるマイロカプセルの調整法

 

 図1.2.6やはり静電気的相互作用を利用した例を示す.ここではアラビアゴムの代わりに同じく多糖であるゲランを用いている.乾燥粉体として取り出すために,アルデヒドで硬化した後に,イソプロパノールで脱水している.そのほかに,ゼラチン−ペプトン,ゼラチン−カルポキシメチルセルロースの例もあるが詳細は文献を参照されたい.

 

1.2.6. ゼラチン−ゲランゴムマイクロカプセルの調製例と相図

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1.2.2. 液中乾燥法

テキスト ボックス:  
図1.2.7. 液中乾燥法の模式図
 壁材となる高分子を溶解させた溶媒中に,芯となる溶液もしくは固体を分致させ,これを更にその溶媒と混じらない溶媒に分散させる.その後に最初の溶媒を徐々に除去して高分子を芯物質の界面に析出させる方法であり,別名界面沈殿法とも呼ばれている.図1.2.7にこの方法の模式図を示す.一次分散液であるエマルションもしくはサスペンションの安定性がカプセルのできに大いに影響し,安定性が悪いと生成率が低下する.また,一般的に単核のカプセルはできにくいが,この方法はたいていの高分子に利用でき,調製も比較的容易なため応用例が多い.ポリスチレンを壁材とする実施例を図1.2.8に示す.この場合,溶液の除去は沸点の低いジクロロメタンの蒸散による.ジクロロメタンが蒸散して,溶解していたポリスチレンが芯となる水溶液の周りに析出してくるまで,このW/0/Wエマルションが安定でなければならない.したがって,一次分散液を分散してW/0/Wタイプのエマルションを調製する際に,あまり強力な活性剤を用いるとエマルションを破壊して0/Wタイプのエマルションとなり,できるのはポリスチンのビーズのみとなるおそれがある.そこで,二次分散する際には活性剤ではなく,ゼラチンやポリビニルアルコールの保護コロイド利用を利用する場合が多いが,粒径の小さいものではできにくい欠点がある.この例ではカプセル粒径は平均8.31μmと記されており,比較的強力な活性剤(Tween20)を用いているために粒径が小さいが,収率が悪いおそれがある.

 

1.2.8. ポリスチレンマイクロカプセルの調製法

 

 この液中乾燥法によるとカプセル膜厚のコントロールは比較的容易で,仕込みポリマー濃度と,芯物質と溶煤との体積比を変化させるのみで調整できる.

 また,ゼラチンを皮膜とするカプセル化の例を図1.2.9に示す.芯物質として医薬品粉体を用いたS/W/0タイプのエマルションであり,冷却することによりゼラチンをゲル化させてこの系の安定化をはかり,イソプロパノールで脱水してゼラチン皮膜を生成させている.この温度差を利用して安定化をはかる方法は,たいていの水溶性高分子に応用可能な方法であろう.

 

1.2.9. 油中乾燥法によるゼラチンマイクロカプセルの調製

 

 上記の例は溶媒除去の手段として,抽出すなわち脱水を基にしているが,同じように溶媒を抽出してハイドロコーチゾンをポリ乳酸でカプセル化した例を図1.2.10に示す.ジクロロメタンはポリ乳酸の良溶媒であるが,ミネラルオイルは貧溶媒である.したがって,ポリ乳酸を溶解したハイドロコ−チゾンジクロロメタンサスペンションをミネラルオイル中に滴下すると,ジクロロメタンはミネラルオイルと容易に混和するので溶媒置換が起こり,ポリ乳酸が析出する.ここではジクロロメタンサスペンションの滴下にオリフィスを用いているので,粒径のそろったカプセルができると報告しているが,方法自体は後に述べる液中硬化被覆法と極めて類似しており,明確な区別は難しい.

 

1.2.10. 溶媒置換法によるポリ乳酸マイクロカプセルの調製法

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1.2.3. 融解分散冷却法

 加熱すると融解し,冷却すると固化するワックスの性質を利用した方法で,ワックテキスト ボックス:  
図1.2.11. 融解分散冷却法によるマイクロカプセル化の模式図
スに限らず,疎水性で,明確な融点を持つ物質が利用できる.調製は一般に,図1.2.11に示されるように行われる.すなわち,ワックスと混和しない溶剤中にワックスを分散させ,ワックスの融点以上に加熱する.その際よくかくはんして数μmのワックスエマルションにする.そこへ芯物質を投入して融解したワックスを集め,徐々に冷やすと芯物質の周りにワックスが沈積してカプセルが調製できる.原理的には先に述べた液中乾燥法と大差がなく,溶媒を除去しないという点が異なるのみである.方法自体は比較的簡単であり,コストも低く,加熱によりカプセルが崩壊して芯物質を放出するという点で,複写機のトナーカプセルによく利用されている.制限としては芯物質が熱に安定であり,かつワックスによく滞れる必要がある.また,もっぱら顔料などの乾燥粉末のカプセルに利用されており,水溶液などはカプセル化しにくい.

 この方法を用いて染料やたんばく質をカプセル化した例を図1.2.12に示す.皮膜として合成したポリハイドライドを用いているが,これは芯物質の放出をポリマーの分解により制御しようと試みているためである.調製温度が少々高く,たんばく質のカプセル化には不向きと思われるが,合成方法によっては,融点の低いポリマーもできるので有望な方法であると著者は述べている.親水性,疎水性の物質もカプセル化でき,収率は70〜90%にも及び,粒子径は調製時のかくはん速度で容易にコントロールできかつ再現性もいいと記されている.

 

1.2.12. 融解分散冷却法による実施例

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1.2.4. スプレードライング法

 液滴を細かく分散して熱風中に吹き付けるとまたたく間に乾燥してしまう.これは細分化することにより,比表面積が増大して溶媒が蒸発しやすくなるためである.これがスプレードライングの原理であり,壁材溶液中の芯物質サスペンションをスプレードライすることにより壁材を沈積させカプセル化するわけで,先に述べた液中乾燥法と類似しており,気中乾燥法と呼ぶ人もいる.この技術は,粉ミルクや合成洗剤などの乾燥に幅広く使われており,直接カプセル化に用いる場合のほかに,相分離法や界面重合法で調製したカプセルスラリーの乾燥にもよく用いられている.相当高温の熱風に吹き付けるので,原則的には熟に不安定な物質のカプセル化には不向きだが,接触時間が数秒のオーダーと短く,溶媒の蒸発による冷却効果などにより酵素などのカプセル化も可能であるとの報告がある・また,急速に溶媒を蒸発させるので,生じる被膜はかなりポーラスであるともいわれている.

 乾燥速度はさまざまな因子が影響しており,液滴の吹き付け速度,その大きさ,分布,テキスト ボックス:  
図1.2.13. スプレードライング法の装置図および調製原理
温度,湿度,熱風の風速などをコントロールする必要があるが,カプセル化効率はほとんどが使用する装置に依存しており,装置メーカーサイドからの工夫がなされている.図1.2.13に典型的な装置図を示しておく.上部の遠心式アトマイザーから加圧空気によりカプセル化原液がチェンバー内に吹きこまれ,そこで加熱された空気と接触して瞬時に乾燥されサイクロン中に捕集される.医薬品(sulfamethoxazole)をセルロースアセテートフタレートで被覆した例や,昇華性の高いニコチン酸をビーズワックス・パラフィンでカプセル化した例,小麦グルテンたんばく質の一つである,グリアジンにより不飽和脂肪酸をカプセル化した例を文献としてあげておく.

 この方法の瞬間的な高温,濃縮作用を利用して,皮膜を重合してカプセル化するという変わった例も報告されている.皮膜としてポリビニルアルコール,カルポキシメチルセルロース,ポリビニルピロリドンなどを用いるが,ここにトリメチロールメラミントリメチルエーテルという反応性のモノマーと触媒とを共存しておき,約140℃の熱風中にスプレードライして薬品をカプセル化している.生じたカプセルの表面性状はスムーズであり,ポアーなどは見られず,薬品の溶出もかなり抑えられると報告している.

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1.2.5. パンコーティング法など

テキスト ボックス:  
図1.2.14. パンコーティング法の装置図および原理図
 パンコーティング法,気中懸滞被覆法,粉床法の原理は極めて単純で,芯物質の表面に壁材を物理的に吸着させてカプセル化する方法であり,吸着のさせ方,用いる装置の違いによって分類されており,原理的には大きな違いはない.もともとカプセル化のための技術というよりも,スプレードライング法と同様に,コーティング技術をカプセル化に流用したものである.したがって技術としてはいかに効率よく経済的にコーティングできるかが目標であり,もっぱら装置自体の工夫が主体である.

パンコーティング法は装置(図1.2.14に典型的な装置図を示す)が比較的単純で,コストも安く,たいていの製薬会社は錠剤のコーティング用に装置を所持しているために主に医薬品のマイクロカプセル化に応用されている.パンを回転することにより粒子が混合され内部の粒子も表面に出てくるが,回転させつつ上部より壁材物質を噴霧すれば,粒子の周りに均質に壁材物質が塗布され,これを乾燥することによりカプセル化が完了する.

 この装置によるカプセル化が効率よく成功を納めるためには,芯物質が球形の固体で耐摩耗性があり,粒子の大きさが約500μm以上あるのが望ましい.したがって実際の医薬品のカプセル化手段としては,まず比較的大きな核となる球状物質(主剤である医薬品に影響を与えない物質,乳糖などがよく用いられる)を調製し,これをパン中で混合してスターチやガムシロップで浸潤させ,その上に医薬品を付着・乾燥し,この行程を繰り返して最終的に壁材物質を噴霧乾燥してカプセルを得る.

テキスト ボックス:  
図1.2.15. Wurster法の装置図
 上記パンコーティング法を改良して,より効率よくコーティングさせるために考案されたのが気中懸濁被服法であり,別名Wurster法といわれ,装置の考案者の名前からとられた.この装置の原理図を図1.2.15に示す.

 底部から送風された空気の流速は上部の幅広くなった部分で急速に低下する.したがって空気によって巻き上げられた固体状の芯物質は再び底部に向かって落下する.循環している芯物質表面上に被覆層において壁材溶液を噴霧すれば,効率よいコーティングが達成できるわけである.ある程度コーティングされたものは重くなり,もはや送風によって上部に巻き上がらず,底部に集まる.効率よく被覆するために気流の発生方法・速度,噴霧ノズルの形,位置などが主に装置メーカーサイドから検討されている.この場合も被覆される粒子の大きさは500μm以上が望まれ,乳糖のような賦形剤を核として用いることが多い.パンコーティング法と同様,芯物質が固体に限られ,噴霧するポリマー溶液が速乾性である必要があり,粒径の小さいカプセルはできにくいという欠点があるが,非常な低温で溶液を凍結させておけば液体のものでもカプセル化できるといわれている.実際に医薬品粉体をカプセル化した例を最近の報文中にみることができる.

 方法自体は異なるが,芯物質の表面に皮膜となる物質を気中で付着させるという観点からすれば同様であるので,粉床法をここにあげておく.液滴が細かい土ほこりの上に落ちると,広がらずにほこりを付着して液滴のままでいることは日常よく見かける現象であり,これが粉床法の原理である.細かく砕いた粉末状の膜物質上に芯となる液滴を滴下するのでこの名前がついた.膜物質としては,ゼラチン,デキストリン,乳糖など粉末状のものなら何でもよい.また,別にタルクやシリカのような無機粉体を用いることもある.これらは,フイラーの役目を果たし,膜を丈夫にする働きがある.

テキスト ボックス:  
図1.2.16. ドライブレンディングの原理図
 同じように溶煤を用いず気中でカプセル化する方法として,粒子の摩擦帯電を利用する方法があり,ドライブレンディング法と呼ばれている.

 図1.2.16に示すように,芯材粒子とそれより粒径の小さい壁材粒子を混合し,せん断力や衝撃力を加えることにより摩擦帯電を発生させ,壁材粒子が芯材粒子上に付着し,単層のいわゆるオーダードミクスチャーを形成しカプセル化するものである.溶媒を用いないこと,壁材を何層にも積層できることなどが特徴である.

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1.2.6. 界面重合法

界面重合法は混じり合わない二つの溶煤中にモノマーを溶解し,両液の界面において高分子を合成する界面重合反応を用いてマイクロカプセルを調製する方法である.原理を図1.2.17に示す.

 

1.2.17. 界面重合によるマイクロカプセル調製の原理

 

一方(水溶性)のモノマーを含む溶液(水相)を混じり合わない溶媒中(油相)に微少な液滴として分散し,更にこの系に他方の(油溶性)モノマーを加えてかくはんすると水相と油相の界面で重合反応が起こり,高分子膜が生成するので,含水マイクロカプセルが得られる.ここではマイクロカプセルの内相を水としたが,初めに0/Wエマルションを調製しておいて外相に水溶性モノマーを加えることによって,含有機相マイクロカプセルを調製することができる.表1.2.2に両種モノマーの組合せによってできる高分子の例を示す.

 

1.2.2. 界面重縮合によるマイクロカプセル化の素材と生成高分子

水溶性ポリマー

油溶性ポリマー

生成高分子

ポリアミン

多塩基酸ハライド

ポリアミド

1,6−ヘキサメチレンジアミン

ピペラジン

L−リジン

セバコイルクロライド

テレフタロイルクロライド

テレフタロイルクロライド

ナイロン6−10

ポリテレフタロイルアミド

ポリ(テレフタロイルL−リジン)

ポリフェノール

多塩基酸ハライド

ポリエステル

2,2−ビス(4−ハイドロキシフェニル)プロパン

セバコイルクロライド

ポリフェニルエステル

ポリアミン

ビスクロロフォルメート

ポリウレタン

1,6−ヘキサメチレンジアミン

2,2−ジクロロエーテル

ポリウレタン

 

界面重合法によるマイクロカプセル膜の合成過程は次の三段階に分けて考えることができる.

@ 高分子重合の初期過程

A 液滴の周りに初期の高分子膜が形成される過程

B 高分子膜が成長してマイクロカプセルの膜になる過程

 これらの過程はモノマーの濃度,分配係数,2相の体積比,界面活性剤,緩衝液,芯物質などの添加物の種類や濃度,かくはん機の種類やかくはん速度,高分子の重合速度や高分子の分子量,高分子重合中の温度,高分子の化学構造と結晶構造,両相の高分子溶媒和の程度などの要因によって支配されている.

高分子重合の初期カテイハ界面の有機溶媒相側で起きているが,上にあげた要因の中で初期重合過程に大きな影響を与えるのはモノマーの濃度と2相間の分配係数であり,水相中のモノマーの有機相への分配係数は有機溶媒の種類や水相中に加える添加物によって影響される.表1.2.3はヘキサメチレンジアミンの分配係数を示している.

 

1.2.3. 各種類の水相/有機相系におけるヘキサンメチレンジアミンの分配係数

水相への添加物

有機相

水相中の濃度

Caq[M]

水相中の濃度/有機相中の濃度

Caq/Corg

なし(pH12.1)

クロロホルム

四塩化炭素

キシレン

シクロヘキサン

0.43

0.32

0.39

0.40

14

76

50

182

水酸化ナトリウム

2mol/HAD)

クロロホルム

四塩化炭素

0.46

0.40

0.7

35

炭酸ナトリウム0.8M

四塩化炭素

0.42

1250

 

 次に,液滴の周りに初期の高分子膜が形成される過程は,ポリマー鎖が液滴の周囲に沈殿して膜の一部分が形成され始める過程で,主にポリマーの水相有機相両溶媒への溶解度(膨潤度)に支配されている.すなわち,高分子を溶媒和しやすい溶媒を用いると,厚く穴の少ない膜が形成される.高分子の溶媒和の程度(膨潤度)は高分子と溶媒の溶解度パラメータの差に依存する.表1.2.4と表1.2.5は代表的な高分子と溶媒の溶解度パラメータを示す.

 

1.2.4. 高分子の溶解度パラメータ

高分子

p

m

s

ポリスチレン

9〜10

0

0

エチルセルロース

8〜11

8〜11

10〜11

ポリエステル

10〜11

8〜11

0

ポリウレタン

0

0

10

ポリアミド

0

0

9〜14

ポリカーボネート

9〜10

9〜10

0

ポリスルフォンアミド

12

10〜15

13〜15

 

1.2.5. 溶媒の溶解度パラメータ

溶媒

溶解度パラメータ

水素結合性

クロロホルム

9.3

p

シクロヘキサン

8.2

p

ジメチルホルムアミド

12.1

m

ジクロロエタン

7.4

p

メタノール

14.5

s

23.4

s

キシレン

88.

p

フォルムアミド

19.2

s

 

水相及び有機相の溶解度パラメータはモノマー,界面活性剤,塩を添加することによって変化する.例えば,4級アンモニウム塩を添加すると高分子の膨潤度が上昇して生成する高分子の分子量が増加することが報告されている.ゼラチンはポリアミドのよい膨潤剤であることから,ゼラチン溶液の周囲にできるポアミド膜は表面が均一で厚い.一方,スルホン酸カルシウムは沈殿剤として働く.水相の周囲にできる膜の形態は重合反応中に高分子が沈殿する速度に依存している.一般に,高分子の沈殿速度が大きければ多孔質の透過性の高いより不均一な膜ができる.ここで,高分子の沈殿速度は重合速度に依存しているため,モノマー濃度,モノマーをサスペンションに加える速度などの重合速度に影響を与えるような因子を制御することによって膜の形態を変化させることができる.

 次に膜の成長過程であるが,いったん膜が界面にできてしまうと互いに反応する二つのモノマーは二つの相に分かれてしまうため,この時点から膜が成長続けるためには膜を少なくとも一方のモノマーが透過する必要があるといえる.膜の透過性は膜の化学構造に依存し,かつ溶蝶の影響を受ける.

 界面重合法によって調製されるマイクロカプセルのうち,ナイロンマイクロカプセルはT.M.S.Changの報告以来よく研究されていて応用例も多い.例えば,1,6−ヘキサンジアミンとセバコイルクロライドの反応からナイロン膜を作って,ペントバルビタールナトリウムを含有するナイロンマゴクロカプセルが図1.2.18に示すような操作で得られる.あらかじめ混合有機溶媒(クロロホルム:シクロヘキサン1:4)を調製する.2%メチルセルロース水溶液25mlと2%ペントバルビタールナトリウム及び6.75%1,6−ヘキサンジアミンを含む水溶液25mlを混合し,1%Brij52(HLB5.3,Atlas Chemical Industry)を含む混合有機溶媒165mlを加えて30秒間かくはんし,W/0エマルションを調製する.かくはんを続けながら,0.16%セバコイルクロライドを含む混合有機溶溶媒165mlを加え,更に1分間かくはんする.ナイロンマイクロカプセルが沈殿してくるので,上澄みを捨てクロロホルムで洗浄する.

 

1.2.18. ペイントバルビタールナトリウム含有ナイロンマイクロカプセルの調製法

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1.2.7. in situ重合法

テキスト ボックス:  
図1.2.19. in situ重合法によるマイクロカプセル化の原理
 互いに混じり合わない2相のどちらか一方の相にモノマーと触媒を溶媒しておくとモノマーは界面で重合反応を起こして,芯物質の表面に均一な膜を形成することができる.この性質を利用してマイクロカプセルを調製するのがin situ重合法である.原理を図1.2.19に示す.親水性モノマー又は疎水性モノマーのいずれか一方,あるいはそれらのプレポリマーを用いてマイクロカプセル膜を重合するので芯物質は液体に限らず,固体や気体であることができる.

 例えばin situ縮重合法を用いてメラミン樹脂を膜物質とするマイクロカプセルを調製する場合,カプセル膜の形成は芯物質の外側からポリマーが沈殿して行われる.メラミン樹脂が熱硬化性であることを利用して,カプセル膜とする方法で,カプセル化の素材として尿素又はメラミン/ホルムアルデヒド及びこれらのプレポリマーが主として用いられる.メラミンとホルムアルデヒドをアルカリ性水溶液中(pH8〜10)で加熱(50〜80℃)することによって反応してモノメチロールメラミンからヘキサメチロールメラミンまでの混合物のプレポリマー水溶液を得る.更に,この溶液を弱酸性0/Wエマルションに加えて弱酸性額域(pH3〜6)で加熱かくはんすると0/W界面に高分子が沈積してマイクロカプセルを得る.

 ラジカル重合性モノマーをカプセル膜の素材として用いる方法をin situラジカル重合法と呼んでいるが,カプセル膜の形成は芯物質の内側からポリマーが沈殿して行われる場合と芯物質の外側からポリマーが沈殿して行われる場合が報告されている.まず,モノマーを外側から与えて,カプセル膜を形成する場合の例として,スチレンモノマーをW/0エマルションの外側から与える架橋ポリステレンを膜とするマイクロカプセルの調製法を以下に紹介する.

 図1.2.20に示すように,1500rpmでかくはんしながら重合開始剤0.2M過硬化ラウロイル,ジビニルベンゼン(スチレンに対する重量比0.1),Span80,スチレン[合成ゴム5%(w/v)含有]を反応器内に仕込み,徐々に水を注入して5分間かくはんするとW/0エマルションが得られる.このW/0エマルションをポリビニルアルコール水溶液中に加えてW/0/Wエマルションが得られる.かくはん速度を250rpmにして系内を窒素置換し,75℃で重合すると,マイクロカプセル内部及び膜内に粒子を含む多核マイクロカプセルが得られる.マイクロカプセルの平均粒子径はかくはん速度が大きいとき小さくなる.かくはん速度を200〜1000rpmの間で変化させることによって1〜200μmの範囲で平均粒子径を制御できる.ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加することによって平均粒子径が小さくなり,粒子径分布も狭くなる.分散媒分率を高くすると平均粒子軽が大きくなる.

 

1.2.20. 含水架橋ポリスチレンマイクロカプセルの調製

 

 逆にスチレンモノマーを0/Wエマルションの内側から与えて,イソオクタン/スチレン/ジビニルベンゼン/水系を用い,液滴内でスラリー重合を行い,架橋ポリステレンを膜とするイソオクタン含有マイクロカプセルを調製することができる.

 分散剤としてアラビアゴム2ヲ‘(w/v)を含む水溶液を70℃に保ち,650rpmでかくはんしながら重合開始剤0.1M過酸化ラウロイル,0.1M2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を含む0.8〜4.0Mスチレン[合成ゴム5%(w/v)含有]イソオクタン,ジビニルベンゼン(スチレンに対する重量比0.2)を加えて反応器内を窒素置換し,6時間反応してマイクロカプセルが得られる.分散柏分率は0.22である.重合速度は,スチレンモノマー濃度が高いはど大きい.モノマー濃度が高くなるとマイクロカプセルの膜厚が大きくなり,更に濃度が高くなると多核のマイクロカプセルを得る.かくはん速度が大きくなると粒径は小さくなり,これと対応して膜厚は小さくなっている.

 このように2相が液体で内相か外相のどちらかからモノマーや触媒を添加する場合だけでなく,固体を内柏とし,固体をモノマー溶液に分散して固体表面でラジカル重合することによってマイクロカプセルを調製する例として膵細胞の光レドックス重合反応を利用したマイクロカプセル化がある.

 膵細胞をアガロース水溶液中に分散し,このアガロース水溶液をパラフィンオイル中に押し出す.ここでパラフィンオイルの液温を40Cに保って,アガロースを素早くゲル化する.次に3b%アクリルアミド,1.5%ビスアクリルアミドと光応答性物質であるリボフラビン10−5M,更に触媒としてN−N−N′−N′−テトラメチルエチレンジアミン10−3Mを含む溶液にこのゲルを加え,高圧水銀ランプ下で光重合反応を開始し,アガロースビーズの界面に高分子膜を形成する.

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1.2.8. 液中硬化被覆法

 マイクロカプセル化しようとする物質をあらかじめ高分子溶液に分散しておいてこの溶液を希望する形に整えて高分子を硬化することによって皮膜を形成する方法である.本法では膜物質として最初から完成した高分子を用いて,それを不溶化させるため膜形成は相当大きい速度で進行する.したがって,カプセル化にあたって芯物質を含む高分子の溶液はあらかじめ整形しておく必要がある.整形するためにオリフィスが用いられることが多いので,本法はオリフィス法とも呼ばれる.オリフィスの機構によってマイクロカプセル化の能率が左右される.高分子は水溶性,油溶性のいずれをも用いることができるが,実際に用いられている例では水溶性高分子が多い.これは高分子の硬化に熱による変性,冷却による硬化,無機電解質イオンによるゲル化,アルデヒド,イソシアネート,高分子電解質イオンなどによる硬化などが利用されていることと関係する.

 無機電解質イオン水溶液に高分子溶液を滴下して表面をゲル化することによってマイクロカプセルを調製する方法は,カプセル化条件が緩和であることから,細胞のマイクロカプセル化に使用されている.まず,ポリ(L−リジン)アルギン酸カルシウム膜で膵臓細胞をマイクロカプセル化する方法を紹介する.

 ラットの膵臓細胞を0.6〜0.8%‘(w/v)アルギン酸ナトリウム/0.9%‘(w/v)塩化ナトリウム水溶液に分散し,1.5%‘(w/v)塩化カルシウム水溶液中に滴下して球状アルギン酸カルシウムゲルを調製する.このゲルを0.02%‘(w/v)ポリ(L−リジン)水溶液中に再分散して3〜5分間処理し,1.0%(w/v)塩化カルシウム水溶液,生理食塩水で洗浄後,等張クエン酸ナトリウム水溶液(pH7.4)中に再分散して5分間処理してマイクロカプセルを得る.この方法を利用した細胞のマイクロカプセル化の報告は多く,また,この方法のポリリジンの代わりにポリエチレンイミン又はキトサンを用いた報告がある.

 次に,アルブミンを熱変性させて架橋し,熱変性アルブミンマイクロカプセルを調製する方法を紹介する.

 熱変性ヒト血清アルブミンを壁としてmonosialoganglioside GM1を含有するマイクロカプセルを調製している.

 ヒト血清アルブミン250mgを含む水溶液1mlに75mg GM1を溶解し,100ml sunflower oil中に分散してW/0エマルションとして,更に,150ml Sunflower oilに加える.90℃C,130℃,150℃まで昇温し,45分間保持した後,降温するとマイクロカプセルを得る.次に,アルデヒドのような架橋剤を用いてアルブミンを架橋高分子膜とする方法を紹介する.

 ヒト血清アルブミン1gを3ml炭酸ナトリウム−塩酸緩衝液(pH9.8)に溶解し,0.5%phosphatidylcholineを含むクロロホルム:シクロヘキサン(1:4,v/v)溶液15mlに加え,500rpmでかくはんする.各種類の濃度にテレフタロイルジクロリドを上記の混合有機溶媒に溶解し,この溶液15mlを加えてアルブミン水海疲と有機相の界面で架橋反応を開始する.反応時間は30〜90分間である.30ml混合有機溶媒を加えてテレフタロイルジクロリドを希釈して反応を停止し,デカンテーションによってマイクロカプセルを分離する.

 アガロース水溶液が冷却によってゲル化する性質を利用して,芯物質をアガロースゲルでマイクロカプセル化した報告がある.すなわち,50mlの遠心沈降管の中でアガロース溶液とラ氏島(芯物質)を含むHanks液を混合する.40℃に保温した20ml流動パラフィンを遠心沈降管に入れて,かくはんし,アガロース溶液とラ氏島を含むHanks液を加えて遠心沈降管ごと氷水中に入れて,ゲル化してラ氏島封入アガロースマイクロカプセルを調製する.

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1.2.9. 界面反応法による無機質壁マイクロカプセルの調製

 無機質壁マイクロカプセルの調製法は,大別すると付着を利用する方法と沈殿反応を利用する方法とがある.付着を利用する方法には粉床法,トポケミカル反応又はメカノケミカル反応などがあり,沈殿反応を利用する方法には,表面沈積法,界面反応法などがある.粉床法は疎水佳粉体,例えばタルク,クレー,アエロジル,ステアリン酸カルシウムなどが乾燥状態にあるとき,これに水滴を落とすと水滴の表面が粉体で囲まれるという機構を利用している.トポケミカル反応又はメカノケミカル反応は芯物質と壁剤となる無機粉体とをボールミルでかくはん混合すると粒子間の摩擦帯電効果によって芯物質の表面に無機粉体が単粒子又は凝集体の形で付着する現象を利用している.これらの方法によって調製したマイクロカプセル膜を観察すると,付着を利用した場合や表面沈積法によって得られたマイクロカプセルでは微粒子が表面に付着して膜を形成しているが,界面反応法では無機物質が連続した膜を形成している.

 界面反応法による無機質球形粒子の調製は二つの無機化合物A,Bが水溶液中で

                 A+B→C+D

なる反応を起こして,Cなる水不溶性の化合物が生成して沈殿する反応を利用している.

 A,Bの化合物のどちらか一方の水溶液を界面活性剤を含む有機溶媒と混合し,W/0エマルションを調製した後,このW/0エマルションを他方の化合物の水溶液に注入すると,二つの水溶液の界面で反応が起きてCができる.反応の進行に伴ってCは殻となり,中心部に副生成物Dの溶液ができる.更に,水,メタノールで洗浄するとC殻のみ球形粒子として残る. ここでA,Bとしては水溶佐の無機塩,無横酸,無機塩基を用い,有横溶媒は常温で液状で,反応に関与せず,水と混じり合わない必要がある.このようにして調製された球形粒子の性状は乳化剤の種類,濃度,水と油の混合比,乳化方法によって影響を受ける.

 界面反応法による球形粒子の調製法はかくはん反応法(液滴上昇法)と遠心力反応法(液適降下法)とに分類することができ,A水溶液とB水溶液の比重,濃度,粘度とAとBの反応速度によって選択される.かくはん反応法(液滴上昇法)は調製したW/0エマルションを一方の反応水溶液のかくはんされている液層底部から注入する方法であり,遠心力反応法(液滴降下法)は遠心沈降管に反応に関与する一方の水溶液を入れ,その上部にW/0エマルションを静かに流し入れた後,遠心分離機にかけてエマルション液滴を降下させながらエマルションと他方の水溶液の界面で沈殿生成反応を進行させる.この反応によって無機粉体の粒子が球状となって沈殿する.

 このようにして,あらかじめ界面反応によって調製した中空で無機質壁を持つ球形粒子に芯物質を含没させることによってマイクロカプセルが調製される.例えばケイ酸カルシウム多孔質中空球形粒子をマイヤーフラスコに採り,ガラス鐘中に入れて,1時間真空排気した後,1M硫酸鋼水溶液を捏透させる.常圧にして24時間放置した後,ろ別,水洗する.この試料を水酸化ナトリウム1M水溶液に捏漬し,15分間かくはん後,24時間放置し,傾斜,遠心分離を繰り返して水洗し,乾燥すると淡青色の水酸化鋼含有ケイ酸カルシウムマイクロカプセルとなる.

 界面反応によってW/0エマルションの状態から中空で無機質壁を持つ球形粒子を調製した例は多く,この方法で水和酸化鉄球形粒子,炭酸コバルト球形粒子,炭酸カルシウム球形粒子,アルカリ土類金属ケイ酸塩球形粒子,シリカ壁球形粒子などが調製されている.

 他に懸濁法と複合エマルション法によって無機質壁マイクロカプセルを調製することができる.懸濁法では,芯物質となる粉体をカプセル壁材の水溶液(例えば水ガラス)中に懸滞しておいて,この懸滞液と界面活性剤ベンゼン溶液からW/0エマルションを調製して他方の水溶液(例えば塩化カルシウム)と接触させて粉体を内包した無機質壁(この場合はケイ酸カルシウム)マイクロカプセルを得る.また,複合エマルション法は懸滞法の粉体の代わりに油又は油溶液を用いて0/Wエマルションとした後,0/W/0エマルションを調製して界面で反応する方法である.

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1.3. 性質

 マイクロカプセルに付与すべき特性は,それがどのように使われるかによって決まる.例えば,感圧複写紙に使う場合は,筆圧が加えられたときに速やかに崩壊して内包物を放出しなければならないが,それ以外のときに放出しては役に立たない.反対に,徐放性薬品の担体として用いる場合は,薬品を徐々に放出させねばならず,一気に崩壊するような事態は避けなければならない.また,液晶をカプセル化して表示材料として用いる場合には,崩壊してはならず,かつ物質の透過も抑えねばならない.このように使用目的によりマイクロカプセルが具備すべき性質はいろいろ異なるが,サイズと膜の物性をコントロールすることにより,カプセルにさまざまな特性を与えることが可能である.膜の物性としては膜厚,親・疎水性,可塑性,透過性,透光性,分解性,表面怪状,電気的性質などがあげられるが,これらは相互に関連して全体的な膜物性,すなわち,カプセルの機能に影響を及ぼしている.

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1.3.1. 粒径分布

 マイクロカプセルの粒子径はマイクロカプセルからの芯物質の放出速度,分散性,また生体内に投与した場合の体内分布や代謝速度をはじめ,マイクロカプセルを崩壊するために必要なカなどマイクロカプセルの応用面に大きな影響を与える.このため粒子径や拉径分布の制御法に関しては多くの研究がある.固体をマイクロカプセル化する場合には調製されたマイクロカプセルの粒子径キ享芯物質の粒子径に大きく依存する場合が多いが,液体をマイクロカプセル化する場合には粒子径は乳化条件や重合条件によってかなり異なった粒子径のマイクロカプセルが得られる.これは,液体をマイクロカプセル化する場合は,まず液体をそれと混和しない他の液体中に乳化し,この段階で得られたエマルションの粒子径がマイクロカプセルの粒子径に反映する場合が多いためである.

 まず乳化条件の中でかくはん速度は粒子径に大きな影響を与える.一般にかくはん速度が大きいと粒子径の小さいエマルションが得られるが,Hopffらは体積平均粒子径dmとはん速度N(rpm)との間に成立する関係を表す式を実験的に求めている.

        logdm=C1+C2logN(C1,C2は定数)

 かくはん開始とともに,粒子径は小さくなり,数分で一定値に達する.次にこのエマルションを安定化するために加えられる界面活性剤や保護コロイドとなるような高分子の濃度がエマルションの粒子径に影響を及ぼす.これらの濃度が高くなると粒径分布の幅が狭くなり,かつ平均粒径も小さくなることが知られている.

 重合条件はマイクロカプセルの粒子径に影響を及ぼすが,これは調製法によって異なる因子を考慮する必要がある.界面重合法ではいくつかの異なる種類のモノマーを同じ試薬濃度を用いて調製した含水マイクロカプセル間で異なる粒径分布が得られる.1,4−ピペラジンとテレフタロイルジクロリドから調製したマイクロカプセルが最も狭い粒径分布を持ち,1,6−ヘキサンジアミンと1,8−ビス(クロロカルポニル)オクタンから調製したマイクロカプセル,1,4−ピペラジンとジクロロジエチルエーテルから調製したマイクロカプセルの順に粒径分布が広がることが知られている.また重合速度が大きいとき粒径分布が狭く,粒子径が小さい.

 ケイ酸ナトリウム水溶液と有機溶媒のW/0エマルションと硫酸アンモニウム水溶液から界面反応法によってシリカ多孔質球形粒子を調製する場合,ケイ酸ナトリウムのSiO2/Na2O比及びェマルションのW/0比を変えると,調製されるシリカ拉子の大きさや程度分布を制御することができる.平均粒子径はエマルションのW/0比に依存して2.3〜3.2Hmの範囲で変化し,ベンゼン相の大きいほうが粒子径は大きい.

 液中硬化法の一つである熱変性アルブミンマイクロスフイアの調製では,得られたマイクロカプセルの平均粒子径はW/0エマルションを調製する段階で用いる界面活性剤の種類,濃度,かくはん方法とその速度だけでなく,熱変性させるときの時間と温度に依存する.加熱時間が同じならば,熱変性させるときの温度が高いほど粒子径は小さくなる.また,ヒト血清アルブミンマイクロカプセルは水に不溶性であるが水溶液中で膨潤し,この膨潤度は熟変性の度合いに反比例する.

 同様にゼラチンマイクロスフイアの粒子径の制御が検討されている.界面活性剤を含む油相中にゼラチン(等電点8.9)水溶液を乳化し,冷却によってゲル化した後,イソプロパノールで脱水し,ホルムアルデヒドで架橋してゼラチンマイクロスフイアを調製する.このとき溶液のpH,ゼラチン濃度は粒径分布と薬物含量に影響を与える.pH3.5において最も小さい粒子が得られ,他のpHでは粒径分布が広がっている.ゼラチン濃度が低いとき平均粒子径も分布も小さくなる.

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1.3.2. 膜透過性

 マイクロカプセルからの放出を制御するためにさまざまな検討がなされてきている.膜物質は透過を制御する最も重要な因子であり,ある溶質分子の膜透過性は溶質分子と膜細孔の比,細孔の曲路率,溶質分子の膜への分配,膜厚,膜の荷電状態をはじめ多くの因子の影響を受けているが,粒子が小さいためにマイクロカプセル膜に関してこれらの因子を求めることが難しい.しかし,低分子物質のマイクロカプセル膜の透過に拡散に関するFickの第一法則を適用して,透過が定常状態又はそれに非常に近い状態にあるとき,式(1.3.1)が求められる.この式を用いてマイクロカプセルの外側から中へ溶質が透過する場合に,マイクロカプセル膜の透過係数を求めることができる.

ここで,

は透過係数である.溶質の濃度C0はいずれもマイクセカプセルの外側の溶液中における濃度を用いている.C00は時刻0における濃度,C0tは時刻tにおける濃度,C0∞は無限大の時間がたったときの濃度である.Dmは膜を均一な媒体と見なしたときの拡散係数,Aはマイクロカプセルの表面積,Viはマイクロカプセルの体積,ΔXはマイクロカプセル膜の膜厚である.したがって時刻tに対して式(1.3.1)の左辺をプロットして得られる直線の傾きから透過係数が得られる.式(1.3.1)は細孔透過機構の場合で,かつ透過溶質が細孔よりも十分小さい場合に用いられる.

 膜透過が溶解拡散によって起きる場合には溶液相から膜相への溶質の分配を考慮する必要がある.そこで溶質の膜への分配係数Kを式(1.3.1)に導入すると透過係数Pは

 式(1.3.1)のC0をV0で表すと式(1.3.4)が得られる.

 ここで,V0はマイクロカプセルの外液の体積である.

 細孔透過でも,細孔に比べて溶質分子の大きさが無視できない場合には,式(1.3.1)は変更を要する.最近ナイロンマイクロカプセルを用いて細孔透過機構によって溶質が膜を透過するとき,膜内の拡散係数が溶質分子の大きさと膜細孔の大きさの比[溶質分子の大きさ(Å)/膜細孔の大きさ(Å)]λに依存するというモデルを用いた式(1.3.5)が検討されている.

 ここに,Dは溶質の溶液中での拡散係数である.

 ところで,マイクロカプセル膜の透過係数から膜内の拡散係数を求めるために膜厚の値が必要になる.芯物質と膜物質の比重から膜厚hを式(1・3・6)で求めることができる.

 ここでγはマイクロカプセルの平均粒子半径,d1とd2はそれぞれ芯物質の密度と膜物質の密度であり,P=(芯物質の重量/マイクロカプセルの総重量)である.そのほかにマイクロカプセル膜の厚さはマイクロトームを用いてマイクロカプセルの断面を電子顛微鏡で観察するという直接的な求め方がある.

 マイクロカプセル膜を通して芯物質を制御放出するために,マイクロカプセル準に対して溶質り透準準や分配率数が潮定されている阜.また,膜内における溶質の拡散係数に影響を与える因子として,膜の組成やいろいろな溶媒中での膜の膨潤度が検討されている.

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1.3.3. 表面の租・疎水性

 マイクロカプセル膜の親水度は膜の組成に依存しているので,親水性の高い膜物質としてアルギン酸カルシウムやポリアクリレートなどのようなハイドロジェルが用いられてきている.膜の親水度は膜の膨潤性の点から膜の溶質透過速度に影響を与える.また,マイクロカプセル表面に酵素や抗体などの生理活性物質を結合又は吸着して反応の場とする場合には,結合量や吸着量に影響を与えるのみならず,その活性にも効果を与える.マイクロカプセルを生体に投与して局所にマイクロカプセルが接着することを期待した薬物ターゲッティングでは,粘膜との相互作用などに膜の親水度が影響を与える.親水性−疎水性のバランスを制御可能な高分子としてポリアクリレート系の樹脂がよく研究されている.すなわち,ヒドロキシエチルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体(HEMA−MMA)のような高分子は,疎水性モノマーと親水性モノマーの比を変えることによって含水率や透過性を広い範囲で変えることができる.このような高分子で細胞をマイクロカプセル化して高分子の応用性を評価した報告を紹介する.

 有機溶媒を用いた界面沈殿法で細胞を含有して水不溶性ポリアクリレートを膜とするマイクロカプセルを調製できる.このマイクロカプセル化細胞は刺激に応答して生理活性物質を放出するとともに,生体の免疫反応から内包する細胞を隔離することができるので生体内に埋め込んで利用することが期待されている.そこで,生体適合性を期待して,いろいろな種類のポリアクリレート膜を用いて,膵細胞をはじめいくつかの細胞をカプセル化して活性を調べた.有機溶媒による細胞の撹傷は大きな問題であるがHEMA−MMAを膜にする場合はヘキサデカン/りん酸緩衝液,カチオン性ポリアクリレート(Eudragit RL)の場合はジエチルフタレートを用いている.

 カチオン性ポリアクリレート(Eudragit RL)で膵細胞をカプセル化した場合膜透過性と生体適合性は十分でないが,3か月間グルコース濃度に依存してインスリンを放出した.また,ヒトディプロイドフイブロブラスト(HDF)を16%ジメチルアミノエチルメタクリレートーメチルメタクリレート共重合体(DMAEMA−MMA)でカプセル化すると細胞は成長しない.チャイニーズハムスターラットの卵巣細胞(CfIO)を75%2−ヒドロキシエチルメタクリレートーメチルメタクリレート共重合体(HEMA−MMA)でカプセル化した場合は,細胞は生存するが成長しない.これは成長のための場所が限られていたためと考えられる.

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1.3.4. 生分解性

 マイクロカプセルの皮膜は,芯物質の隔離が一義的役割であり,イオン交換のように皮膜を積極的に用いる場合以外は芯物質を放出してしまえば不要な存在となる.工業的製品としては,絶対量も多くなく,プラスチック廃棄物ほどの注意は払われていないが,製品開発に当たっては常に念頭においておくべき課題であろう.分解性が特に問題となるのは,医薬品のカプセル化の場合である.著効のある医薬品もその担体であるカプセル皮膜に葦性,アレルギー原性,発がん性などがあっては何もならないので,天然・合成を問わず使用可能な皮膜は限られてくる.それと同時に不要となった皮膜が分解されずに体内に蓄積されるのはいろいろな面で不都合な問題が生じる.

 生分解性のある皮膜はその体内での蓄積防止という観点と同時に,医薬品の制御放出への応用という観点からも注目されている.すなわち,副作用の軽減,投与間隔の増大を目指し制御放出製剤(controlled drug delivery system)の開発が盛んであり,一定期間,一定速度で薬品を放出する製剤が理想的であるとしてさまざまな工夫が試みられているが,単に皮膜を通しての拡散のみでは達成が乾しく,皮膜の生分解と同時に薬物を放出する機構が有望視されている.

 生分解性の高分子皮膜として,乳酸の重合物,乳酸の共重合物,酸無水物の重合体などが試みられており,なかでも医用材料として手術用縫合糸や埋め込み用基材に用いられているポリ乳酸が繁用されている.

in vitroにおけるポリ乳酸マイクロカプセルの分解に関する界面科学的研究によると,アルカリ性で溶媒のイオン強度の高いほうが分解が早く,膜の表面から低分子セグメントが抜けていくことがわかった.この事実は,膜の生分解による制御放出速度を一定に保てる可能性を示唆している.更に血漿たんぱく質の存在は,カプセルに吸着して表面を親水化して分解を促進することもわかった.高分子量のポリ乳酸は体液と同等のpHでは分解しにくいので,分解を促進するために四級アンモニウム塩を添加して分解促進を図った例もある.また,乳酸とグリコール酸50:50で調製したカプセルの大きさによる分解速度をin vivo,in vitroで検討した結果,大きなカプセルはin vivo,in vitroともに多少他より分解を受けやすい傾向はみられるものの,測定した範囲内(45〜130μm)では大きさにより差は認められないとの報告がある.

セバチン酸,ドデカノイン酸,ビスーカルポキシーフエノキシープロパンの重合体もしくは共重合体を用いてインシュリンを液中乾燥法で調製し,その放出挙動をin vitro,in vivoで測定した報告によると,薬物放出の機構は必ずしもポリマーの崩壊のみによるものではなく,薬物のポリマーマトリックス中での拡散にも影響される.この程度は,ポリマーマトリックスの密度や,薬物の親・疎水性に影響される.ここで用いられたカプセルのSEM観察によると,表面はかなり密であるが,内部はポーラスであり,これは調製時の溶剤の除去速度に依存する.また,この製剤の効果はin vivoで約1週間持続するが,より疎水性かつ重合度の高いポリマーを用いれば,更に長期にわたる効果の持続が期待できると述べている.

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1.3.5. 電気的性質

 マイクロカプセルの電気的性質はサイズや膜厚のようなファクターに比べると軽んじられる傾向にある.しかし電子印刷に用いるけ−の帯電性,粒子の分散性,皮膜の生分解性,膜へたんぱく質吸着及びそれに伴う生体適合性,血液成分との相互作用,溶質の透過性88)等カプセルの特性にとって無視しえ、ない影響の大きいファクターである.

 L−リジンとテレフタル酸との界面重縮合で調製したマイクロカプセルの詳細な電気泳動の測定結果を見ると,皮膜の表面層の電荷分布は均一ではなく膜の固定電荷数に偏りがある.これは調製時の重合過程に影響され,皮膜がイオンに対し透過性がある場合に観察される.したがって,このように膜透過性の高いカプセルのイオン性溶質の透過は,膜電荷分布に影響されることが予想される.またカプセルの分散性も,非透過性の膜に対する予潮とかなり異なることが考えられる.

 カプセル表面へのたんばく質の吸着は,生体適合性,固定化酵素への応用という観点から検討されているが,たんぱく質の吸着量は裏面の電気的性阜により異なり,更に吸着配向性の違いや吸着したたんばく質が表面電荷の大きさによりコンフオメーション変化を引き起こすとの報告がある.また,生体細胞との相互作用の研究から,貪食細胞によるカプセルの取り込みは,ガプセル裏面電位が細胞のそれと近い場合に一番貪食されにくく,カプセルの表面電位が細胞のそれよりも小さくても大きくても取り込みは増大するとの報告もあり,リンフオカインなどのイムノレギュレーターを内包したカプセルのターゲティング製剤への応用などの観点から興味深い結果が得られている.

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1.4. 用途

 マイクロカプセルはその性質を生かして、工業分野、医学分野、農業分野、食品分野など多面にわたって用いられている。以下はその中でも最も多く用いられ、また将来性のあるいくつかである。

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1.4.1. 記録材料

(@)ノンカーボン紙

 ノーカーボン紙は,カーボンなどの有色色素をまったく用いない複写紙であり,図1.4.1に示すような構成になっている.マイクロカプセルは上用紙,中用耕の裏面,マイクロカプセル層と顕色剤層を同一面に塗布したプレスタイプ紙の表面に均一に塗布されており,このマイクロカプセルの中には,酸性顕色剤と接触したとき発色する無色の発色剤がオイルに溶解されて含まれている.ボールペン,プリンターなどの圧力が加えられるとこのマイクロカプセルは破れて,発色剤オイルが顕色剤層に移行してコピーがとれる仕組みになっている.

 ノーカーボン紙においてマイクロカプセルは,

@            発色剤を溶解したオイルを包みこみ,見かけ上,オイルを粉末化する.

A 長期間安定に中身を保護し,変質を防止する.

B 発色剤と顕色剤を隔離し,圧力が加えられたときにはじめて発色反応を起こさせる.

などの役割を果たしている.経時によって複写能力が低下したり,自然にノーカーボン紙自体が発色してしまうのを防止しているわけである.

 

1.4.1.ノーカーボン紙の構成

 

 (A)圧力測定フィルム

  圧力測定フィルムは,薄層塗布技術とマイクロカプセル技術を駆使して開発されたもので,現在,あらゆる産業分野で品質向上,生産性アップ,量産品のコストダウン,故障時の分析,工程問題点の原因解析等に大きく貢献している.

 例えば,自動車エンジンのシリンダガスケット締付け時の圧力分布と圧力値の測定には高い評価を得ている.ガスケットは,エンジン内の燃料ガス,冷却用の水,潤滑用の油がもれず,しかも完全に分離しなくてはならない役目を担っている.このことから,面圧が非常に重要な要素になっていたが,圧力測定フィルムを用いることにより,従来,数値化できなかった部分において定量的測定が可能となり,品質の安定化に高い効果が得られるようになつた.このことから,一部の製品は,JIS D3105−1979(自動車機関用シリンダヘッドガスケット)の性能試験用に採用された.

 

(B)感光・感熱記録紙

 感熱記録方式は現像処理のいらない直接記録であり,装置にとって保守性,操作性に極めて優れ,更に,小型,軽量,低価格を実現できる可能性をも秘めている.そのためファクシミリだけでなく,バーコードシステムや医療画像記録システムをはじめとして各種プリンターの分野にも広く使用されてきている.この感熱記録材料の主流を占めているのがロイコ系感熱紙であり,それはフルオラン化合物のような無色のロイコ染料とビスフェノールAのようなビスフェノールAのようなフェノール性化合物との反応との発光反応を利用している.

 常温での隔離性と,加熱時の迅速な反応(熱応答性)の両特性の実現を目指して活発な研究開発が行われてきた.例えば,記録層を多層にして,常温での各化合物の接触を防ぎ,加熱時に溶融,拡散させる方式がある.しかし,この方式では,拡散の問題から高い熱応答性を得る点では不利である.マイクロカプセルをこの材料に応用することは,上記多層方式の欠点である物質の層間拡散に伴うタイムロスをなくし熟応答性の向上が期待できる.

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1.4.2. 医学材料

 (@)医薬品

 医薬品をマイクロカプセル化する理由について,以下のように説明できる.

@ 鎮咳薬eprazinoneのような液状の医薬品を固状(pseudo−solid)に変化させることにより,取扱いや保存が容易になる.

A 殺虫剤などの有蕃化学薬品をマイクロカプセル化することにより,取扱い者を危険から守る.

B 抗生物質,例えばアンピシリン三水和物をマイクロカプセル化することにより,製薬会社の従業員の感作増感を低減させる.

C 塩化ナトリウムなど,芯や核部の形成に必要な物質をマイクロカプセル化することにより吸湿性を低下させる.

D チアミン塩酸塩,リボフラビン,ニコチン酸などの各種ビタミンとりん酸鉄との混合粉末をマイクロカプセル化することにより粉末の流動性が改善され,打錠が容易になる.

E ビタミンAパルミテートなどの脂溶性ビタミンをマイクロカプセル化することにより医薬品の物理的及び化学的安定性が向上できる.

F サリチル酸メチルやハッカ油などをマイクロカプセル化することにより揮発怯を低下させることができる.

G アスピリンとクロルフェニラミンマレイン酸塩(抗アレルギー薬)は配合不可とされているが,それぞれをマイクロカプセル化することにより配合できるようになる.

H クロキサシリン(抗生物質),プレドニゾロン(ホルモン),キニジン硫酸塩(循環器作用薬)などをマイクロカプセル化することにより不快な味を隠蔽することができる.

I 硫酸第一鉄や塩化カリなどをマイクロカプセル化することにより胃腸管内壁に対する刺激や出血を抑えることができる.

J 多種類の医薬品に対してマイクロカプセル化することにより,生体内での放出制御,放出遅延化が容易になる.

 

(A)人工臓器

 肝臓,腎臓,膵臓また肺などのいずれの臓器においても,臓器の中を毛細血管が縦横に走り,臓器と血液との間で栄養,代謝産物,更に各種たんばくなどの物質交換が極めて円滑に行われている.臓器の機能を代行する人工臓器においても,物質交換は極めて円滑に行われなければならない.しかし毛細血管を人工的に作ることができない現在,表面積が大きく物質交換を迅速に行いうるマイクロカプセルは人工臓器作製にとって基本技術である.

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1.4.3. 農業材料

 農薬の効力のみを考えると安定で寿命の長い農薬が好ましいが,このような農薬は逆に分解も遅く,長期間残留し,食物連鎖に取り込まれる可能性があり,近年その使用が著しく制限されてきた.一方,寿命の短い農薬は,通常の製剤で使用されると,効力の持続性がなく,ある期間効力を持続させるためには,一度に必要以上の農薬を散布するか,散布回数を多くする必要がある.前者の場合には,非対象物への影響,例えば残留や薬害などの問題を生じ,かつ非常に不経済である.後者の場合には,散布の手間がかかり省力化が望まれている現状を考えると好ましくない.このような意味から,化合物自体は容易に分解するものを用いて,製剤によってこれを安定化し,必要な期間,必要な場所でのみ高い効力を発揮させることが理想であり,ここに農薬のマイクロカプセル化の大きな意義がある.また,効力の高い農薬でも苺性的に問題のある場合は,これをマイクロカプセル化することによって製剤的に寺性を軽減して実用的に問題のないようにすることが可能である.ここにもう一つの農薬のマイクロカプセル化の意義がある.この考え方は,人畜蕃性の軽減のみならず,魚毒性,環境生物への書性,作物への薬害等の軽減にもあてはまる.以上のように農薬のマイクロカプセル化の意義は,農薬の放出を制御し,必要なとき,必要な場所に,必要量の農薬を送達するとともに,化合物自体の好ましくない性質をカバーし,高い効力を必要な期間維持することにある.

 農薬をマイクロカプセル化した際に期待される機能には次のようなものがあげられる.

@ 作用点で長期間有効であり,残効性が得られる.

A 施用間隔が延ばせるので省力化になる.

B 施用量が通常の製剤より少量でよい.

C 人畜に対する蕃性や刺激性が軽減される.

D 薬害が軽減される.

E 魚毒性が軽減される.

F 環境中での光,水,空気,微生物などによる分解が減少する.

G 薬剤の流亡,揮散による消失が減少する.

H 薬剤による環境汚染が減少する.

I 他薬剤との反応を抑制できる.

J 液体の薬剤を固型化できる.

K 薬剤の臭気や味がマスキングできる.

L 薬剤のドリフトが防止できる.

M 作用機作の変化により有効に作用する標的害虫の数が増加する.

N 施用面の違いによって効力が変動しない.

O 取扱いが容易になる.

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1.4.4. 香料・化粧品

(@)香料

 果物類の果汁と香料を小量の植物性バインダーとともに粉末化したものを,以前は長い間にわたり粉末ジュースとして飲んできた.この粉末香料はマイクロカプセル化香料(以下,香料カプセルという)のはしりともいえるが,スプレードライイング法で年間数千トン製造され,製造コストは比較にならないほど安く,香料カプセルのこの分野への進出はむりであった.ただ粉末香料を香料カプセルとみた場合には,壁材を多く必要とし,揮発性物質の撹失が多く,香料によっては香りが変化する等の欠点があるうえ,シームレスな皮膜とはならないのでマイクロカプセルとは呼びきれなかった.

 文字どおりの香料カプセルがマイクロカプセル化によって出現したのは,先にも述べたように約27年前に米国NCR社で創り出されたときである.ノーカーボン紙を世に送り出したNCR社は,そのマイクロカプセル化技術を多方面に応用すべく研究を重ねた結果,多くの物質をマイクロカプセル化することに成功し,その一つに香料カプセルがあった.

 香料をマイクロカプセル化することによりどんな利点があるか,その主なものをあげると次のようになる.

@ 香料を見掛け上固体に転化できる.

A 揮発怯の香料の匂いや香りが安定化する.

B 貯蔵性能が飛躍的に向上し,常温常湿で年蒸発率は0.1%以下である.

C 放出条件をコントロールすることができる.例えば,スタラッチすることでカプセルを破壊し一気に揮散させたり,壁材に細孔をもたせ徐放性にすることも可能である.

D 仮の固体にできるので,平面でも曲面上にも香料を保持することができる.

E 香料を揮散させずに坪刷インク,塗料として使用することができるので,印刷した面上に下の絵柄を揖なうことなく透明な状態で絵柄に関連した香り(例えば林檎の絵柄の上に同じ林檎の香り)を塗布することができる.

 

(A)化粧品

 化粧品は香水,オーデコロン,頭髪用化粧品,皮膚化粧品,仕上げ化粧品,特殊用途の6種類に分類され,更に,洗顔クリーム,乳液,化粧水など36品目に細分化されている.マイクロカプセルは高機能化や新機能,新感触の追求などの目的で,はとんどすべての品目に配合可能である。

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1.4.5. 食品

 近年,日本人の食生活水準の向上に伴い飴食の時代とまでいわれている.一方,食生活の多様化とともに市場にはさまざまな形態をした多くの種類の食品が出回っている.その中で個々の商品を同種の商品と差別化することは,非常に重要な問題となっている.この問題を解消する一つの手段としてマイクロカプセルの食品への応用が検討されている.

 食品分野では粉末調味料,粉末油脂及び粉末香料などのより付加価値の高いものへの応用も研究開発され始めているが,利用する場合の利点を整理すると,次のように要約できる.

@ 液体(芯物質)の性質をまったく変えることなく見掛け上回体に転化できる.

A 芯物質の空気による酸化や湿気の防止ができ,芯物質の保存性が向上する.

B 食品中の他の成分との相互作用により変質を受けやすい物質を保護できるので,長期間にわたり混合状態で取り扱ったり,保存することができる.

C 芯物質の皮膜表面からの放出条件をコントロールすることができる.例えば,発音,発香,溶解,混合,反応などの時期を,マイクロカプセルの大きさ,芯物質と皮膜物質との比率,皮膜物質の性質の違い,皮膜の強度及び透過性などでコントロールできる.

D 見掛け上の比重を調節できる.粉末食品などの場合,芯物質が液体でも,他の混合素材の比重に合わせることができるので,均一な混合状態が長期間にわたって維持できる.

E 高粘度の物質をマイクロカプセル化することにより,流動性,作業性が向上する.

F コピー食品の製法として利用できる.

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1.4.6. その他

(@)マイクロカプセル型接着剤

 マイクロカプセル型接着剤は,セメダイン社が米国NCR社からマイクロカプセル化技術を導入して開発した,日本でマイクロカプセル化技術によって生まれた最初の接着剤で,上市以来15年以上にわたって販売され,愛用されている一液タイプの接着剤である.当初は,促進剤をカプセル化して主剤に混入して一液化していたが,最近のテクニカル・データによると,ベースはアクリル樹脂で,速硬化型の硬化剤をカプセル化しているようである.この接着剤の特性を列記すると次のようになる.

@ 硬化時間が短い:張り合わせてから数分後には硬化が始まり,30分後には最大強度に達する.

A 混合が不要である:一液化されているので,、計量や混合の必要がなく,作業時間が極端に短くて済み,それらのミスによる接着不良等の事故もない.

B 硬化のための特別な機器は不要である:速硬化型の硬化剤をカプセル化しているので,反応させるための加熱炉,熱プレート,加熱洛槽等の機器は必要ない.

C カプセルの着色:カプセル粒子を緑色に着色してあるので,目視で分散状態を判定することができる.

D 参瞬間接着剤との比較:理想的といわれるシアノアクリレート系接着剤と比較して,価格は安く,広い面積に使用できる.

E エポキシ接着剤との比較:二液を計量して混合する必要がなく,硬化時間が数分程度と短く,ポットライフがなく,低温において完全硬化が可能である.

以上のような諸特使を有しているので,各特性を生かした用途が開発されれば飛躍的に発展していく余地は十分にある.現在までのところ,カプセル型接着剤の用途は工業用に限られているが,これを日用品の用途にまで広げていきたいものである.

 

(A)マイクロカプセル化液晶

 外観的には流動性を持った液体でありながら,光学的あるいは電気的にはある温度範囲で結晶のような異方性を持つ有機材料を液晶と総称しており,これまでに発見あるいは合成された液晶のほとんどがディスプレイに用いられている.いわゆる液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal dis−Play)は,1968年ハイルマイヤー(G.H.Heilmeier)のDSM(dynamic scattering mode)−LCDの発明以後20年足らずで急速に発展してきた.電卓時計に応用した第一世代,家電製品やゲーム機,計測機器に応用した第二世代を経過し,現在は高度情報社会に対応可能な各種OAやニューメディア機器への対応を目指した第三世代に入っているといえる.現在のLCDはTN(twisted nematic)−LCDを基本としており,セルのコントラストを最大にするためには,リタデーションに基づく精密なセルギャップ制御を必要とする.

 1981年,フアーガソン(J.L.Fergason)により発明されたカプセル化液晶NCAP(nematic curvilinear aligned phase)80)・81)は,ネマチック液晶をマイクロカプセル化することでLCDの大面積化を飛躍的に促進した.原理的には散乱現象を利用するため偏光板を必要とせず,かつ視野角依存性がはとんどない.またプロセス的には厳密なセルギャップ制御を必要としないため,大面積表示が可能となった.このNCAP液晶技術は,さまざまな可能性を示唆している.

 

(B)カプセル化サーモクロミツタ材

 カプセル化サーモクロミツタ材は,そのもの単独で使用されることはほとんどなく,印刷方法や二次加工方法により商品化されている.例えば,グラビア印刷,スクリーン印刷,フレキソ坪刷等の印刷が可能で,更にラミネート加工,ラベル加工,ワックス加工,熱転写加工,フィルム同時成型等ができ,二次素材化が割合容易に可能なので食品,医療品,化粧品などの包装材料として利用できる.

 今までに応用された商品は,変色する絵本,風呂用玩具,人形,金魚,タオル・ハンカチーフヘの印刷,ストロー,紙コップ,ガラスコップ,合成皮革手袋,長鞄,ビール樽等がある.最近ではスキーウェアの新素材向けに採用され,外気温が0℃以下では生地が黒色になって太陽光をよく吸収し,5℃以上になると白色に変わって光を反射するようになり,光の吸収度を変えることで体内温度を自動的に調節する仕組みになっている.また近々気温で色の変わる雨傘も発売されそうであり,今後も思いもかけないものに応用されていく楽しみがある.

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2. 本論(特許電子図書館の引用)

2.1. 製造法

マイクロカプセルの製造法は種々あることは1.2で説明した。しかし、それらはあくまでも基本的なものであって、用途別にまだ細かく分けられる。その一例として以下に述べるものがある。

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2.1.1. 特開2001-097819,特開2001-097818および 特開2001-096146より

 従来カプセル中に内包油滴を有するマイクロカプセルは、食品、医薬品、化粧品等の分野で検討され、例えば、カプセル内に薬剤を内包して配合することにより、製品中での薬剤の安定性を改善しようとする試みがなされている。マイクロカプセル製造方法としては、内包油滴となる油相と、カプセル化剤を含む水相とからO/Wエマルジョンを調製し、このエマルジョンを微粒子に成形、カプセル化する方法がある。例えば、O/Wエマルジョンをさらに外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンとし、水相を硬化させてカプセル化する方法、O/Wエマルジョンを空気中で噴霧しながら硬化させるスプレークーリング、O/Wエマルジョンをノズルから滴下して気体中あるいは液体中で硬化させる滴下法などがある。

しかしながら、通常の乳化方法ではO/Wエマルジョンの乳化粒子を1μm以下とすることは困難であり、例え1μm以下の乳化粒子径を持つO/Wエマルジョンができたとしてもその安定性が十分でないため、その後の工程で油滴同士が融合し、マイクロカプセルの内包油滴径が大きくなってしまう傾向がある。そして、このような場合、内包油滴のカプセル化効率を上げるためにマイクロカプセル径を大きくせざるを得ないという問題があった。特に、O/W/Oエマルジョンを経由する方法では、O/Wエマルジョンがさらに外油相に分散乳化されるので、内包油滴同士の融合に加えて内包油滴と外油相の合一が起こりやすい。このため、O/W/O乳化の際に温度や攪拌速度が制限され、マイクロカプセルの粒径のコントロールが非常に難しく、また、得られたマイクロカプセルの安定性も十分でないという問題があった。また、製造時の内油相のロスを抑制することも望まれていた。

さらに、他の基剤に配合した場合のマイクロカプセルの安定性や、肌上での使用感、内包油滴の放出性も重要である。例えば、乳液やクリームなど粘性媒体中で高速攪拌して得られるような製品においては、その製造工程にマイクロカプセルを添加するとカプセルが破壊されやすい。このような製品の製造工程中でもカプセルが壊れず、しかも、肌上にのばして塗布するとカプセルから内包油滴が徐放されるようなマイクロカプセルを得ることは、これまで非常に困難であった。

親水性高分子ゲル化剤をカプセルの破断強度が特定の範囲となるように用いたマイクロカプセルにおいて、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明にかかるマイクロカプセルは、平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つカプセル化剤が親水性高分子ゲル化剤であることを特徴とする。また、カプセルの破断強度は場合によって10〜500、500〜2,000、2,000〜5,000g/cmと変えることが可能である。

カプセル化剤の主成分が、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤であることが好適であり、また、親水性高分子ゲル化剤が寒天又はカラギーナンであることが好適である。また、マイクロカプセルが親水性非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒とを含むことが好適であり、マイクロカプセル油性分散物は、前記何れかに記載のマイクロカプセルが、油相中に分散していること特徴とする。

マイクロカプセル油性分散物において、内油相と、親水性高分子ゲル化剤を含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、前記O/Wエマルジョンを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンを調製し、前記O/W/Oエマルジョンの水相を固化させて得られることが好適である。また、前記O/Wエマルジョンが、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、該水溶性溶媒中油型エマルジョンに、親水性高分子ゲル化剤の水溶液を添加して調製されるO/Wエマルジョンであることが好適である。

また、前記何れかに記載のマイクロカプセル油性分散物の外油相を除去して得られるものであることが好適である。また、本発明のマイクロカプセル又はその油性分散物において、カプセル内に油性薬剤を含有することが好適である。また、本発明にかかる化粧料は、前記何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とする。また、本発明にかかる固形化粧料は、前記何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とする。

また、内油相と、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め加熱溶解しておいた水相とから、該ゲル化剤の固化温度以上で平均粒子径が0.01〜3μmのO/Wエマルジョンを調製するO/Wエマルジョン調製工程と、前記O/Wエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以上で外油相中に分散乳化するO/W/Oエマルジョン調製工程と、前記O/W/Oエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以下に冷却して水相を固化するカプセル化工程と、を備え、前記水相から調製されるゲルの破断強度が各場合によって10〜500、500〜2,000、2,000〜5,000g/cmであることを特徴とする。また、前記製造方法において、O/Wエマルジョン調製工程が、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相成分を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、該水溶性溶媒中油型エマルジョンと、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め加熱溶解しておいた水溶液とを該ゲル化剤の固化温度以上で混合する工程を含むことが好適である。

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2.1.2. 特開平11-319540より

マイクロカプセルは、芯物質の安定保護や放出制御のために香粧品などに広く使われてきており、マイクロカプセル製造方法やマイクロカプセルを用いた芳香剤等の各種の改善が提案なされている。例えば、香料を含むゲル状芳香剤組成物において、さらに香料を内蔵したマイクロカプセルを分散させ徐放性を向上させたゲル状芳香剤組成物が提案されている。このようなマイクロカプセルの膜材としては、上記文献等にも記載されているように、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素、ポリウレタン、ゼラチン、アルギン酸などが用いられている。その中でも多孔質で徐放効果を有するポリアミド膜のマイクロカプセルが、芳香性組成物、消臭性組成物、抗菌性組成物などの揮散性有機物を含有するゲル状組成物に広く用いられてきた。しかし、このようなポリアミド樹脂を膜材とするマイクロカプセルは、ポリアミド樹脂の原料である多塩基酸ハライドと多価アミンとを、多塩基酸ハライドの酸ハライド当量より、多価アミンのアミン当量の方が多くなる当量比率で界面重縮合させて製造されており、このようにして得られたマイクロカプセルを含有するゲル状組成物は、マイクロカプセル膜と芯物質、またはゲル中の揮散性有機物質が反応し、品質を著しく劣化させることがあった。例えばゲル状組成物が芳香剤の場合、香りにフレッシュ感がなくなり、ゲルやマイクロカプセルが変色してしまうため、見た目の美観を失ってしまうという場合があり、用いられる香料等の揮散性有機物質が限定されてしまうという問題があった。このように、マイクロカプセルには上記問題を解決すべく更に改良が望まれている。

このような従来の問題を解決し、ゲル状組成物中におけるマイクロカプセル膜と芯物質、またはゲル中の揮散性有機物質との反応を防止し、品質の劣化やマイクロカプセル自体の変色を抑制したマイクロカプセル、その製造方法、および該マイクロカプセルを含有するゲル状組成物を提供することを目的とする。

品質の劣化や美観を損なわないマイクロカプセルを含有するゲル化組成物を製造するために鋭意検討を行った結果、マイクロカプセルの膜材をポリアミド樹脂で形成し、該ポリアミド樹脂膜の原料多塩基酸ハライドと多価アミンの比率を特定の範囲に限定することによって、その目的を達成しうることを見出し、完成するに至った。即ち、疎水性有機物質を膜材で被覆したマイクロカプセルにおいて、該膜材が、多塩基酸ハライドと多価アミンとを、ハライド基の当量Aとアミノ基の当量Bとの関係が0<B/A<1の条件下、ポリビニルアルコールの存在下に界面重縮合させて得られたポリアミド樹脂からなることを特徴とするマイクロカプセルが提供される。また、本発明によれば、界面重縮合反応により疎水性物質をポリアミド樹脂で被覆したマイクロカプセル製造方法において、多塩基酸ハライドを溶解させた疎水性有機物質を、ポリビニルアルコール含有水溶液中に分散、乳化させ、次いでアルカリ性化合物を添加した後、該多塩基酸ハライドのハライド基の当量Aとアミノ基当量Bとの関係が0<B/A<1となる量の多価アミンおよびアルカリ性化合物を添加し、界面重縮合反応させることを特徴とするマイクロカプセル製造方法が提供される。更に、前記疎水性有機物質を芯物質とするマイクロカプセル、揮散性有機物質、ゲル化剤、界面活性剤及び水を含有することを特徴とするゲル状組成物が提供される。

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2.1.3. 特開平11-188257より

コア部材が熱可塑性化合物からなり、シェル部材で被覆されたコア/シェル構造を有するマイクロカプセル製造方法としては、乳化剤および分散安定剤として水溶性高分子を含有する水相にコア部材用の非水溶性の熱可塑性化合物とシェル部材用の多価イソシアネ−ト化合物からなる油相を添加し分散して微小な粒子を造粒し、アミン化合物などを加えて重合反応によりシェル部材がポリウレアから成るマイクロカプセルを形成している。この操作において、油相の分散微粒子化に使用される乳化剤および分散安定剤としてのポリビニルアルコ−ルやメチルセルロ−スの如き水溶性高分子は、多くが水相に溶解しているが、一部はシェル部材用の多価イソシアネ−ト化合物に吸着したり結合してマイクロカプセル粒子となる分散粒子の表面を覆っていることが確認されている。特に、平均粒子径が10μm以下に小さくなる様に攪拌分散する為には水相の粘度を上げる必要が有り、高分子量の水溶性高分子を多量に溶解して用いる必要がある。また、粒子を分散した分散液にアミン化合物などを添加してシェルを形成する際に、分散液の分散安定化のためにも多量の水溶性高分子を必要とし、後のマイクロカプセル粒子だけの取り出し時には、この高粘度で多量の水溶性高分子を含むため、遠心分離効率が悪くなる欠点があり、さらに、廃水の処理に多くの労力と費用を必要とする。さらに、乾燥したマイクロカプセル粉末を半導体封止樹脂などへの分散混合にも、この粒子の表面に吸着や結合した水溶性高分子により、硬化反応後の樹脂の耐水、耐湿の電気特性、接着特性が低下しやすい問題が有った。

分散安定剤としての水溶性高分子を使用しないか、極力その使用を排除すると共に、微小かつ分散係数が良好で、電気的用途に特に優れた特性を発揮するマイクロカプセル、および分離効率の良いマイクロカプセル製造法を提供することを目的とする。

水溶性高分子の使用量を減らし、かつ分散係数の小さい粒子径のマイクロカプセルを得るための手段を鋭意検討した結果、特定の界面活性剤を主成分とする乳化剤を含む油相を水相に分散することにより、水相と油相の界面張力が低下し、かつ油相の濃度を高くして形成した水相/油相型のエマルジョンを転相分散することにより高粘度状態で微細な油滴を分散でき、粒子径が小さく、また粒子径の揃った粒子に分散造粒したマイクロカプセル製造方法を見出だし本発明に到達した。また、マイクロカプセルの平均粒子径を0.2〜5μmの範囲に設定すると共に、上記マイクロカプセルの分散係数(粒子径の標準偏差/平均粒子径)を1.0以下に設定すると、遠心分離性などの効率に優れ、またコア部材として硬化促進剤を内蔵するマイクロカプセルは、硬化性樹脂や硬化剤と共に用いると硬化均一性に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られることを見出だした。

コア部材が非水溶性の熱可塑性化合物からなり、ポリウレアからなるシェル部材で被覆されたコア/シェル構造を有するマイクロカプセル製造法において、HLBが15〜20のノニオン系界面活性剤を主成分とする乳化剤、コア部材およびシェル部材形成用の多価イソシアネート化合物を含む油相を用いて水相に分散させて水相/油相型のエマルジョンを形成し、次いで油相/水相型のエマルジョンに転相して微小な油滴を形成した後、多価アミン化合物によりシェル部材を形成することを特徴とするマイクロカプセル製造法を第1の要旨とし、マイクロカプセルの平均粒子径が0.2〜5μmでかつ分散係数(粒子径の標準偏差/平均粒子径)が1.0以下であることを第2の要旨とし、乳化剤の80重量%以上がHLBが15〜20のノニオン系界面活性剤であることを第3の要旨とし、コア部材の非水溶の熱可塑性化合物が、エポキシ樹脂用の硬化促進剤であることを要旨とする。

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2.1.4. 特開平09-024269より

今日、リン脂質を使ったマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)は、医薬品等の薬剤や化粧品、機能性食品等に用いられているが、これは一般に、予備分散機と、精密分散機によって製造されている。予備分散機には、高速回転型分散機が最も広く用いられており、精密分散機には高圧ホモジナイザーが用いられている。この高速回転型分散機101と高圧ホモジナイザー201とを用いた製造装置の概念図であり、高速回転型分散機101に処理物を投入して羽根103を高速回転させて処理物の連続相に分散相を予備的に分散させる。そして、予備分散した処理物をポンプ301を介して高圧ホモジナイザー201に送り、精密分散させ、調剤が完了する。尚、高圧ホモジナイザー201から取り出された処理物は、再度、高速回転型分散機101に戻されることもあり、また、高圧ホモジナイザー201のみを数回通過させることもある。
 リポソームの場合には、処理物として、水及び/又は水溶性薬剤を含有する連続相と、リン脂質及び/又は脂溶性薬剤を含有する分散相とを用いる。また、脂肪乳剤の場合には、処理物として、水及び/又は水溶性成分を含有する連続相と、油及び/又は脂溶性薬剤を含有する分散相と、リン脂質を含有する界面活性剤とを用いる。

予備分散は、これらの処理物sを、高速回転型分散機101の処理槽102内に適当な液面高さまで投入し、羽根103を高速回転させ、処理物に羽根の回転によるせん断力を加えることにより、分散処理をなすものである。他方、精密分散は、予備分散された処理物に、高圧を加えることによって、分散処理を行うものであり、目的とする平均粒子径のマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)を得るために、数回乃至数十回、繰り返し、高圧ホモジナイザー201による処理を行っている。

ところで、マイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)は、粒子径を小さくするほど生態内での機能からの観点から好ましい場合が多いが、粒子径を小さくするには、より大きなエネルギーを処理物に対して加える必要があるとされていた。具体的には、より小さな粒子径のマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)を得るには、高圧ホモジナイザーによる加圧圧力を高める必要があり、また、高圧ホモジナイザーによる処理回数を増加させる必要があるとされていた。そして、より小さな粒子径のマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)を得るために、リン脂質を含有する界面活性剤濃度をあげたり加圧圧力及び処理回数を増加させてきたが、リン脂質濃度を1.2%前後、油脂10%以上の脂肪乳剤の系では、平均粒子径が150nm以下のものを得ることは、実質的に不可能であると言われる段階にまで至っている。

また、この種のマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)自体、或いは、この種のマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)を用いた製品(医薬品等の薬剤、化粧品、機能性食品等)の安定性を高めるためには、マイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)の平均粒子径を小さくする必要があると考えられていた。即ち、平均粒子径が比較的大きなマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)の場合、経時変化によって分離し易く、これを改善するためには、より大きなエネルギーを処理物に対して加え、マイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)の平均粒子径を小さくする必要があるとされていた。

しかし、目的は、従来の方法に比して、より小さなエネルギー(具体的には、高速回転型分散機の羽根により処理物に対して加えられる力や高圧ホモジナイザー等の精密分散機にて処理物に対して加えられる力)で、またより短い処理時間で、目的の平均粒子径のマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)を製造する方法を提供することにある。

また、この事を逆に言えば、加えられるエネルギー(具体的には、高速回転型分散機の羽根により処理物に対して加えられる力や高圧ホモジナイザー等の精密分散機にて処理物に対して加えられる力)及び処理時間が、従来の方法と同一の場合において、より小さな平均粒子径のマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)を製造することができる方法を提供することにある。さらに、他の目的は、長期間に渡って安定性の高いマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)を製造することができる方法を提供することにある。さらに詳しくは、従来の方法により得られたマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)と比較するに際して、平均粒子径を同一として比較した場合にあっても、或いは、加えられるエネルギーの大きさ或いは時間を同一とし場合にあっても、いずれの場合にも、従来の方法に比して、安定性の向上したマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)製造することのできる方法を提供せんとするものである。

さらに他の目的は、従来の方法によって製造されるマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)に比して、平均粒子径が小さく、安定性の高いマイクロカプセル(脂肪乳剤やリポソーム)製造することのできる方法を提供せんとするものである。

従来の方法は、平均粒子径の小径化或いは安定性の向上と言った課題に対して、処理物に対して加えられるエネルギーを主眼としてその改良を図ってきたものであったが、従来着目されていなかった泡、特に肉眼では識別不可能な微小の泡沫に注目することにより、従来の課題を解決せんとするものである。即ち、処理物の少なくとも1種としてリン脂質を用い、この処理物を高速回転型分散機にて分散させることにより、リン脂質を使ったマイクロカプセル製造する方法において、高速回転型分散機の処理槽内を処理物のみで満たすと共に、この処理槽内を処理物による加圧下になした状態で、高速回転による分散を行うことを特徴とするリン脂質を使ったマイクロカプセル製造方法を提供することにより、上記の課題を解決する。

実施することにより、泡、特に微小の泡沫の発生を無くし或いは抑えることができ、これにより、泡、特に微小の泡沫に起因する問題を無くし或いは減少させ、上記の課題を解決することができたものである。ここで、従来の方法を、泡、特に微小の泡沫の観点から捉え直すと、高速回転式分散機101を使って予備分散を行う場合、羽根103及び回転軸104等の高速回転部には、キャビテーションが発生し、処理物s中の溶存気体が気泡化する。また、大気(処理槽102内の処理物s上の気相k)の巻き込みによる気泡の発生も著しい。この発生した気泡は、当然の事ながら、分散作用により、微小な泡沫になり、肉眼では識別困難である。この微小な気泡(微少な気泡とは、気体分子(O2 、N2 等)を含む)は、リン脂質により安定化されて存在している可能性がある。そのメカニズムとしては、以下の様な仮説が考えられる。即ち、この微少な気泡は、リン脂質の小泡体内部、又は、その膜中にとりこまれ、又は、吸着されてしまうと考えられる。この状態に陥った場合、分散目的に外部からエネルギーを投下しても、気泡の体積変化により、エネルギーが吸収され、目的の粒子径のものを得にくい。と言うのも、微少な気泡は、水溶液中に油との共存状態で存在し、外部からエネルギーを投下しても、そのエネルギーは容易に吸収され、分散のためのエネルギーとして作用しない。このような微小な気泡の存在は、肉眼で識別不可能であり、前述のように、処理物に対して投下するエネルギーの観点からの改良が主として行われており、泡に着目した改良は、予備分散の段階で発生した目に見える大きな泡を取り除いたり、泡が治まり抜けるまで待った後、精密分散を行うといった経験的な手法が試まれるに止まっていた。ところが、このような微小な気泡を無視した改良では、本質的な解決に到らず、言い換えれば、どのようにすれば処理物にエネルギーを有効に作用させ得るかと言った問題を無視した状態で、いたずらに、高圧ホモジナイザーによる加圧圧力を高めることにより、或いは、同処理を何回も繰り返すことによって、エネルギーのロスがあるものの、若干の改善を得ていたのが現状であると言える。尚、微小な気泡が水溶液中に油との共存状態で存在していると、その分、界面面積が多くなり、その結果、界面活性剤の必要量が著しく多くなる。さらに、上記の様なプロセスで得られた処理物中には、微小な安定な気泡が混入しておりそれが処理物の長期安定性に、影響すると考えられる。例えば、そのメカニズムとしては、微少な気泡による長時間(数時間ないし数カ月)にわたる上昇流の形成や、また気泡中の酸素による酸化の問題などである。

これに対して、高速回転型分散機による予備分散時に、泡の混入、発生を防止する。これは予備分散機の処理槽を、処理物のみ満たして、実質的に気相部が無い状態とし、これにより、大気の混入を防止する。そして、さらに重要な事は、羽根を高速回転させる際に、処理物による加圧下でそれを行うことにより、キャビテーションによるもので溶存気体の気泡化を防止する(実質的に無くするか、或いは減少させる)。これによって、微小な気泡の発生を抑え、投下されるエネルギーを処理物に有効に作用させ、所期の目的を達成する。また、本願発明の方法で得られた処理物中には、微小な安定な気泡の混入が無いか或いは少ないため、前述のような上昇流が形成されにくく、処理物の長期安定性が図られる。しかもその上、気泡中の空気による酸化の問題も、発生し難くなるものである。また、微小な気泡の存在量を減少させることができるため、その分、界面面積が少なくなり、その結果、界面活性剤の必要量を低下させることができる。

用いる高速回転型分散機とは、常温、常圧下での回転によってキャビテーションが発生する分散機であり、具体的には、ディゾルバー型、ホモミキサー型、櫛歯型等々の種々の高速回転型分散機を用いることができる。高速回転型分散機の処理槽内を処理物のみで満たすのは、気相との接触を極力防ぐためであり、若干の気相の存在があっても、微小な気泡の存在量を減少させる効果を得ることができれば許容される。処理槽内を処理物による加圧は、常圧より高くキャビテーションの発生を減少させることができれば足り、0.1kg/cm2 以上、より好ましくは0.3kg/cm2 以上とするが、回転数、処理温度によって適宜変更して実施し得る。

処理物は、リポソームの場合には、処理物として、水及び/又は水溶性薬剤を含有する連続相と、リン脂質及び/又は脂溶性薬剤を含有する分散相とを用いることができる。また、脂肪乳剤の場合には、処理物として、水及び/又は水溶性成分を含有する連続相と、油及び/又は脂溶性薬剤を含有する分散相と、リン脂質を含有する界面活性剤とを用いることができる。リン脂質(レシチン)の一例としては、卵黄リン脂質、大豆リン脂質等のリン脂質を挙げることができる。水溶性或いは脂溶性の薬剤には、抗生物質、化学療法剤、抗アレルギー用薬、循環器官用薬、抗炎症薬、抗リウマチ薬、ホルモン、ビタミン、抗悪性腫瘍薬、造影剤、診断用薬等の薬効成分の他、農薬、化粧品、機能性食品における有効成分を含むものとする。油としては、大豆油、オリーブ油等の天然油の他、合成油を用いることができる。

上記の条件の高速回転型分散機による処理のみで、リン脂質を使ったマイクロカプセル製造方法を実施することができるが、さらに、高圧ホモジナイザーや超音波式ホモジナイザーによる精密分散を行ってもよい。この場合、高速回転型分散機による処理物を、気相に接触させずに精密分散装置に移送して精密分散を行うようにし、気相との接触による新たな気泡の混入を防止する。また、前処理として、処理物を予め攪拌してもよい。この場合、攪拌時の羽根は低速で回転されるため、分散処理時のような高速回転によるキャビテーション問題は生じない。さらに、バッチ式で行う場合には、処理物を高速回転型分散機の処理槽内に投入して、低速回転で運転することにより処理物を攪拌する。この場合も、攪拌時の羽根は低速で回転されるため、分散処理時のような高速回転によるキャビテーション問題は生じなし、粉末投入による包合エアーの泡技きも行える。そして、この攪拌された処理物に、必要に応じて他の処理物を加え、上記の条件による高速回転にて分散処理を行う。

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2.1.5. 特開平05-269367より

 カプセル壁を形成するのに要求される反応性成分の一つを分散相に溶解し、他の一つを連続層に溶解して、液体中で、界面重縮合を実施することによりマイクロカプセルを形成すること自体は知られている。例えば米国特許第3,577,515号に開示されている。この方法は、初めに、カプセル壁を形成するのに要求される第一の反応性成分と不溶性物質の溶液を高剪断の連続相中で分散し;次いでそれに、混合下、連続層を含む媒体中に溶解した第二の相補的な反応性成分の溶液を添加することにより実施される。米国特許第3,577,515号の方法では、連続的水性相中の水不溶性物質の分散のために、ポリビニルアルコール、ゼラチンおよびメチルセルロースのような非イオン性の保護コロイドを使用することを推薦している。多数の壁形成成分が開示されている。

この方法の一つの欠点は、マイクロカプセルが大きい使用できない塊に凝集してしまう傾向があるので、45重量%またはそれ以上のような物質の濃縮量をカプセル化することができない点である。米国特許第4,280,833号、第4,640,709号および第4,938,797号のような若干数の米国特許は界面重縮合を介してのマイクロカプセル化の方法を開示しており、それによると45重量%またはそれ以上のような物質の濃縮量を高分子殻壁内にカプセル化することができ、でき上がったマイクロカプセルは水性媒体中で安定な懸濁液を形成する。高い濃度のマイクロカプセルを得るためには、特定の型の界面活性剤または界面活性剤の組み合わせ、例えば、米国特許第4,280,833号中のリグニンスルホン酸塩、米国特許第4,640,709号中のアルキル化ポリビニルピロリドンポリマーおよび米国特許第4,938,797号中のナフタレンスルホン酸塩のエチレンオキシド/プロピレンオキシド/エチレンオキシド−プロックポリマーとのホルムアルデヒド縮合物の組み合わせが、重大な影響を及ぼすことが教示されている。界面重縮合により製造したマイクロカプセルは、染料、インキ、色形成剤、医薬、香料、調味料、農薬等のような多数の用途の物質を含有できるので便利である。第一の壁形成物質を溶解することができそして該壁形成物質と非反応性の如何なる液体、油、低融点固体または溶媒可溶性物質はこの方法によりカプセル化することができる。一度カプセル化されると、液体または他の型は、それがカプセル皮を破壊し、砕き、融解し、溶解し、または他の方法によって取り除くある種の手段により放出されるまでまたは適当な条件下で拡散が行われるまで保存される。

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2.1.6. 特開平05-007766より

マイクロカプセルは、ミクロン単位の微細な容器(カプセル)内に各種の物質を封じ込めたもので、カプセルを破壊することによって内部の芯物質を放出したり、封じ込めた芯物質をカプセルを通してゆるやかに放出するなどの多岐に亘る利用ができるため、多くの有用性を持つものである。かゝるマイクロカプセルにおいて、液状の芯物質を封じ込めたマイクロカプセル製造法は、大別すると、コアセルベーション法とエマルジョンの界面での沈澱による界面沈澱法が知られている。コアセルベーション法は、高分子溶液が環境の変化(他物質の添加等)によって濃度の大きい相と、小さい相とに相分離する現象を利用するもので、水溶性高分子を使用するため、水に不溶な油類や粉体などを容易にマイクロカプセル化することができ、特に有利であるとされている。

この発明の発明者は、はっか油などの植物精油等を芯物質としたマイクロカプセルを得る目的で、油類のマイクロカプセル化に有利とされているコアセルベーション法によるマイクロカプセル化を試みた。しかしながら、公知のコアセルベーション法では、経済的に有利な状態でマイクロカプセルを得ることがきわめて困難で、一応マイクロカプセルが得られてもマイクロカプセル自体が相互に凝集した崩壊し易い状態のマイクロカプセルしか得ることができないなど実用化に多くの問題があった。かゝる現状に鑑み、発明者は従来油類のマイクロカプセル化にはあまり有利でないとされている界面沈澱法によって、植物精油等を芯物質とするマイクロカプセルを鋭意研究した結果、経時安定性に優れた植物精油を芯物質とするマイクロカプセルを経済的に得ることができるこの発明のマイクロカプセル製造方法を完成させたものである。

この発明のマイクロカプセル製造方法は、被膜物質であるアラビアゴムと、ショ糖脂肪酸エステルからなる界面活性剤とを、水と共に混和してスラリーを調製し、得たスラリーに植物精油からなる芯物質を添加して撹拌によってエマルジョンを形成させると共に、このエマルジョンにひまし油と無水エタノールの混合溶液を加えて液を低温状態に維持しながら、この混合溶液中にさらに無水エタノールを添加し、撹拌によってマイクロカプセル化した沈澱物を生成させ、この沈澱物を乾燥して植物精油を芯物質とするマイクロカプセルを得ることを特徴とするものである。この発明において、マイクロカプセルの芯物質を構成する植物精油は、ハッカ油、オレンジ油、レモングラス油、ラベンダー油等の天然物から得られる香料、その他に有用な植物精油およびこれら天然の植物精油に含有される成分を合成することによって得られる精油類である。被膜物質であるアラビアゴムと、ショ糖脂肪酸エステルからなる界面活性剤とを、水と共に混和してスラリーを調製し、得たスラリーに植物精油からなる芯物質を添加して撹拌によって形成するエマルジョンは、液温を35以下、より好ましくは0〜20に保持して行うもので、液温が35以上の場合には、植物精油が揮散するおそれがあるので好ましくない。前記エマルジョンにひまし油と無水エタノールを加えて撹拌によってマイクロカプセルの沈澱物を生成させる場合の液温は、35以下、好ましくは0〜20に保持するもので、この液温が35を超える場合には生成した被膜形成物質であるアラビヤゴムが軟化状態となって所定のカプセルを形成することができないか、もしくはカプセルが形成されてもその壁膜が破れ易くなって所期のマイクロカプセルを得ることができない。一方、液温がマイナスの場合は、カプセルの形成にはさほど支障がないが、溶液自体が凝固する傾向があるので、好ましくない。界面活性剤であるショ糖脂肪酸エステルは、HLB(hydrophilelipophile balance)が8〜15のものを選択して使用することが好ましく、この範囲を逸脱したものはカプセル化の進行が困難となる。エマルジョンにひまし油と無水エタノールの混合溶液を加えた混合溶液に添加する無水エタノールは、前記混合溶液の3倍量以上、より好ましくは3〜5倍量で、添加量が3倍量以下の場合には、均一な分散ができず好ましくない。

この発明のマイクロカプセル製造方法は、界面沈澱法によるものである。一般的な界面沈澱法によるマイクロカプセル製造方法は、Wを水、Oを油とした場合に、〔(W/O)/W〕タイプの複合エマルジョンを用いる水中での界面沈澱法と、〔(O/W)/O〕タイプの複合エマルジョンを用いる油中での界面沈澱法とがある。この発明は、後者の〔(O/W)/O〕タイプの方法を採用しているもので、芯物質となる植物精油を溶解状態で含む油相(O)と、被膜形成能を有する被膜物質を溶解した水相(W)とによって水中油型、すなわち、(O/W)タイプのエマルジョンを生成させ、このエマルジョンをカプセル化媒体である他の油系溶液(O)に分散させて〔(O/W)/O〕タイプの複合エマルジョンを生成するもので、かゝる〔(O/W)/O〕タイプの複合エマルジョンからマイクロカプセルを生成させるものである。この場合、被膜物質としてアラビアゴムを用い、HLBが8〜15のショ糖脂肪酸エステルを界面活性剤として使用し、また、前記他の油系溶液としてひまし油を用いてエマルジョンとし、無水エタノールの存在下でこのエマルジョンからマイクロカプセルを沈澱として生成させるものである。かゝる沈澱生成操作を液温20以下の低温で実施することによって、最終的に得られたマイクロカプセルは、カプセル同士が付着凝集することなく、確実な被膜形成された植物精油を核とするマイクロカプセルを得ることができる。

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2.2. 用途

 マイクロカプセルの用途は1.4で述べた通りである。これを基にもっと詳細な内容を以下に示す。

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2.2.1. 特開2001-219487より

糊を用いて紙を接合して紙製品を製造する際にその糊をマイクロカプセル化する。糊のマイクロカプセル化は糊を内部に閉じこめるため、その密着性を一時的に抑制できる。カプセルはある工程に達したところで崩壊すれば、抑制されてた密着性を得ることができ、紙を接着する。これらより糊を用いて紙を接合して紙製品を製造する工程は容易になる。

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2.2.2. 特開平10-287510および特開平05-238904より

農業分野にて多く用いられこの用途は、有害生物防除剤、養分補給剤などの農薬である。農薬は現代の農業においては欠かせないものであり、このマイクロカプセル化は1.4.3で述べたとおりである。

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2.2.3. 特開平10-258223より

 造粒体は医薬工業製品、肥料製品、食品製品、飼料製品、農業製品、触媒製品、窯業製品、セラミック製品、粉末冶金製品、洗剤製品、プラスチック製品、バイオ工業製品等、例えば触媒、軽量材料、防音材料、マイクロカプセル、軽量骨材等として好適に採用される。

該造粒体は、吸水膨潤した高吸水性ポリマーの球状粒子の表面に粉末体を接触させ、乾燥、又は更に焼成することによって製造される。該造粒体は、球状の粉末体固形殻の内部に球状空間を有してなるものであり、造粒体を構成する粉末体は、有機質材料又は無機質材料であってよく、無機質材料としてはセラミック、金属等が好ましく用いられる。

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3. 特許データの検索

3.1. 検索方法

 特許庁電子図書館を用いて、マイクロカプセル、製造、界面活性剤などの語句に注目してマイクロカプセルの製造法および用途について調べる。

その方法は、まずインターネットより特許庁電子図書館のホームページ(http://www.ipdl.jpo.go.jp/homepg.ipdl)へ飛び、「特許・実用検索へ」の「公報テキスト検索」を選択し[OK]をクリックする。ページが変更し、「公報種別」において「公開特許公報 (公開、公表、再公表)」を選択する。「検索項目」「検索キーワード」「選択検索方式」を内容別に変えて[検索]をクリックする。検索結果が500件以下で適当な件数だったら[一覧表示]をクリックする。該当した特許のデータがいくつか表示されるので、閲覧したい特許をクリックすると表示される。検索結果が500件以上なら「検索項目」「検索キーワード」「選択検索方式」を再編して[検索]をクリックする。検索結果の件数によっては、上記を繰り返す。

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3.2. 検索結果

 「検索項目」「検索キーワード」「選択検索方式」の内容において表3.2.1から表3.2.3のようにして検索した。

 

3.2.1

検索項目

検索キーワード

選択検索方式

要約+請求の範囲

マイクロカプセル

or

 

3.2.2

検索項目

検索キーワード

選択検索方式

要約+請求の範囲

マイクロカプセル

or

要約+請求の範囲

製造

or

 

3.2.3

検索項目

検索キーワード

選択検索方式

要約+請求の範囲

マイクロカプセル

or

要約+請求の範囲

製造

or

要約+請求の範囲

界面活性剤

or

 

 表3.2.1においてその検索結果は件であり一覧表示できなかったために再度内容を絞って表3.2.2のように検索した。その件数は105件であったが、もう少し絞って表3.2.3のように検索した。ヒット件数は77件であり、その内容を以下に示す。

 

1. 特開2001-302521 鳥類胚抽出物を人体に応用するビジネスモデル

2. 特開2001-219487 紙製品の製造方法及び製造装置並びに紙接合用糊及び紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法

3. 特開2001-097819 マイクロカプセル及びその製造方法

4. 特開2001-097818 マイクロカプセル及びその製造方法

5. 特開2001-096146 マイクロカプセル及びその製造方法

6. 特開2001-046010 香味油含有マイクロカプセルの製造方法

7. 特開2001-038193 複合シリカマイクロカプセルの製造方法と複合シリカマイクロカプセルの芯物質の固定化と徐放作用の制御方法

8. 特開2000-325776 粉体化マイクロカプセル及びその製造方法

9. 特開2000-290252 ベンジルアミノジアセトアミドファミリーの新規化合物、該化合物の組成物、製造方法及び用途

10. 特開2000-170096 低密度発泡紙ならびにその製造方法

11. 特開2000-147479 マイクロカプセル化されたゲスト・ホスト液晶材料を使用するカラ―液晶ディスプレイ

12. 特開2000-038402 架橋された単糖及びオリゴ糖の粒子、特にマイクロ粒子又はナノ粒子、それらの調製法、並びに、それらを含有する化粧用、医薬用又は食物組成物

13. 特開平11-322587 常温で固体の生理活性物質のマイクロカプセル化方法およびこの方法により得られるマイクロカプセル組成物

14. 特開平11-319540 マイクロカプセルおよびその製造方法並びにそれを含有するゲル状組成物

15. 特開平11-188257 マイクロカプセルの製造法

16. 特開平11-143407 表示装置

17. 特開平11-058946 感圧記録シートの製造方法およびその感圧記録シート

18. 特開平11-000190 微細構造組成物

19. 特開平10-287510 有害生物防除マイクロカプセル剤の製造方法

20. 特開平10-258223 造粒体の製造方法

21. 特開平10-230158 マイクロカプセルの製造方法

22. 特開平10-182264 セラミック造粒体

23. 特開平10-165802 新規なin situ重合法によるマイクロカプセルの製造方法およびそれによって得られるマイクロカプセル

24. 特開平09-315997 徐放性製剤およびその製造法

25. 特開平09-117658 マイクロカプセル分散液の製法ならびにマイクロカプセルの製法

26. 特開平09-024269 リン脂質を使ったマイクロカプセルの製造方法

27. 特開平08-231402 テオフィリン徐放性マイクロカプセルのドライシロップ剤およびその製造法

28. 特開平08-187953 感熱記録材料用マイクロカプセル、その製造方法及びそれを用いた感熱記録材料

29. 特開平07-333886 マイクロカプセルトナー、その製造方法及び画像形成方法

30. 特開平07-325294 含液晶マイクロカプセル、その製造方法、液晶/高分子複合膜及びその製造方法

31. 特開平07-261163 含液晶/高分子マイクロカプセル、その製造方法及び液晶記録表示媒体

32. 特開平07-258309 ビニル系共重合体の製造方法及び該共重合体の組成物

33. 特開平07-252775 繊維処理組成物及びそれによる基材の処理法

34. 特開平07-186599 ステッカー型剥し絵の製造方法

35. 特開平07-098449 含液晶マイクロカプセル及びその製造方法

36. 特開平07-026251 蓄熱用マイクロカプセルおよびその製造方法

37. 特開平06-330392 耐摩耗性および摺動性にすぐれた複合めっき金属材料、およびその製造方法

38. 特開平06-238159 マイクロカプセルの製造方法

39. 特開平06-219924 マイクロカプセル含有洗顔料

40. 特開平06-171210 感圧記録シートおよびその製造方法

41. 特開平06-118638 マイクロカプセルの製造方法

42. 特開平06-107696 還元型グリアジン水溶液、その製法およびその利用

43. 特開平06-107555 牛黄清心マイクロカプセル及びその製造方法

44. 特開平06-106052 感光性マイクロカプセルの製造方法

45. 特開平06-095082 液晶光学素子の製造方法、マイクロカプセル化液晶及びその製造方法

46. 特開平05-301897 還元型グリアジン水溶液、その製法およびその利用

47. 特開平05-285375 ケラチンS−スルフォ塩を壁構成原料として用いるマイクロカプセル及びその製造方法

48. 特開平05-269367 マイクロカプセル、その製造法およびその使用法

49. 特開平05-238904 農薬マイクロカプセルおよびその製造方法

50. 特開平05-222672 繊維コンディショニング用芳香性マイクロカプセル

51. 特開平05-221803 水中易分散乳化性固型農薬又は防疫用薬剤用組成物とその使用方法

52. 特開平05-185736 金属イオン及びハロゲンイオンの含有量が少ない感熱記録材料の製造方法

53. 特開平05-178703 殺虫剤組成物及びその製造方法

54. 特開平05-148128 サンフイルターを含有するマイクロカプセル、それらの製造法、それらを含有する化粧用及び製薬用組成物並びにそれらの用途

55. 特開平05-113558 含液晶/高分子マイクロカプセル、その製造方法及び光変調フイルム

56. 特開平05-097660 多重層エマルシヨンおよびその製造方法

57. 特開平05-024362 感熱記録材料及びその製造法

58. 特開平05-007766 マイクロカプセルの製造方法

59. 特表2001-513582 スポンジ状材料、その製造方法及びその応用

60. 特表2001-503438 エンドサルファンマイクロカプセル分散体

61. 特表2000-514819 貯蔵安定性の有害生物防除剤分散体の製造方法

62. 特表2000-511524 マイクロカプセル化された組成物

63. 特表2000-504033 疎水性物質、特に日焼け止め剤を含むキチン又はキチン誘導体からなるマイクロカプセルとこのマイクロカプセルの製造方法

64. 特表2000-501084 均一な形態を有するマイクロカプセルの製造方法、並びにこの方法により製造されたマイクロカプセル

65. 特表2000-500001 非イオン性界面活性剤を含有する活性成分担体、並びに、特に食品、化粧品及び薬品におけるその使用

66. 特表平11-514360 マイクロカプセル化殺虫剤調製物とその製造方法

67. 特表平11-509862 新規「バーストフリー」持続放出型ポリ(ラクチド/グリコリド)微小球

68. 特表平11-505466 生物学的に活性な化合物の周りに付着された内部ワックスコーティングを有する球状微粒子

69. 特表平10-509709 クロマゾンの低揮発調合物

70. 特表平10-506644 天然生成物から形成される膨張した固体状組成物

71. 特表平10-503418 水性エマルジョンの製造

72. 特表平10-502137 エネルギー吸収性の布コーティング及び製造方法

73. 特表平09-511762 マイクロカプセル並びにその製造及び使用方法

74. 特表平09-510180 安定な水性分散液の貯蔵および希釈

75. 特表平08-509246 エステル化した多糖類とポリアミン化またはポリヒドロキシル化した物質の間のトランスアシル化反応の微粒子製造への使用、そのようにして製造された微粒子、方法、およびそれを含有する組成物

76. 特表平08-508677 架橋した植物ポリフェノールの壁を有するマイクロカプセルおよびそれを含有する組成物

77. 再表99/000323 熱可塑性樹脂被覆ポリリン酸アンモニウムおよびその製造方法

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3.2.1. 特開2001-219487:紙製品の製造方法及び製造装置並びに紙接合用糊及び紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】特開2001−219487(P2001−219487A)

(43)【公開日】平成13年8月14日(2001.8.14)

(54)【発明の名称】紙製品の製造方法及び製造装置並びに紙接合用糊及び紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法

(51)【国際特許分類第7版】B31F 1/24、// C09J 11/00、133/00

【FI】B31F 1/24 C、C09J 11/00、133/00

【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2000−34062(P2000−34062)
(22)【出願日】平成12年2月10日(2000.2.10)
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目5番1号
(72)【発明者】
【氏名】豊福 敏宏
【住所又は居所】広島県三原市糸崎町5007番地 三菱重工業株式会社三原製作所内
(72)【発明者】
【氏名】須田 康晴
【住所又は居所】広島県三原市糸崎町5007番地 三菱重工業株式会社三原製作所内
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
【テーマコード(参考)】

3E078
4J040

【Fターム(参考)】

3E078 BB03 CC06 CC12 CC23X CC42 CC62
4J040 HA146 KA02 KA11 MA09 NA07 PA29 PA30 PA32 PA33 PB08
(57)【要約】
【課題】 紙製品の製造方法及び製造装置並びに紙接合用糊及び紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法において、装置の大型化を抑えしかも熱量の増加などランニングコストの増加を招かないようにしながら紙製品の生産性を向上することができるようにする。
【解決手段】 糊12を用いて紙8,9を接合して紙製品19を製造する紙製品製造方法であって、NaOHが高濃度に封入されたマイクロカプセル30を該糊12に混入して構成したマイクロカプセル混入糊12aを、該紙8,9の張り合わせ箇所に塗布する塗布工程と、該塗布工程で塗布された該糊12aに外部から刺激を与えて該糊12aに混入された該マイクロカプセル30を破壊し内部のNaOHを利用して該紙8,9の接合を行なう接合工程とをそなえるように構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 糊を用いて紙を接合して紙製品を製造する紙製品の製造方法であって、NaOHが高濃度に封入されたマイクロカプセルを該糊に混入して構成したマイクロカプセル混入糊を、該紙の張り合わせ箇所に塗布する塗布工程と、該塗布工程で塗布された該糊に外部から刺激を与えて該糊に混入された該マイクロカプセルを破壊し該紙の接合を行なう接合工程とをそなえていることを特徴とする、紙製品の製造方法。
【請求項2】 該紙製品は段ボールであって、該接合工程では該段ボールの中芯とライナとを接合することを特徴とする、請求項1記載の紙製品の製造方法。
【請求項3】 該接合工程では、該塗布工程で塗布された該糊に、圧力,熱,振動,音波,電界のいずれかによって刺激を与えることにより、該マイクロカプセルの破壊を行なうことを特徴とする、請求項1又は2記載の紙製品の製造方法。
【請求項4】 糊を用いて紙を接合して紙製品を製造する紙製品の製造装置であって、NaOHが高濃度に封入されたマイクロカプセルを該糊に混入して構成したマイクロカプセル混入糊を、該紙の張り合わせ箇所に塗布する塗布部と、該塗布部により塗布された該糊に外部から刺激を与えて該糊に混入された該マイクロカプセルを破壊し該紙の接合を行なう接合部とをそなえていることを特徴とする、紙製品の製造装置。
【請求項5】 該紙製品は段ボールであって、該接合部では該段ボールの中芯とライナとを接合することを特徴とする、請求項4記載の紙製品の製造装置。
【請求項6】 該接合部では、該塗布部により塗布された該糊に、圧力,熱,振動,音波,電界のいずれかによって刺激を与えることにより、該マイクロカプセルの破壊を行なうことを特徴とする、請求項4又は5記載の紙製品の製造装置。
【請求項7】 紙の接合に用いる糊であって、NaOHが高濃度に封入されたマイクロカプセルが混入されていることを特徴とする、紙接合用糊。
【請求項8】 紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造方法であって、NaOH水溶液を重合開始剤とセバコイシルジクロライドを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌して該スチレン・アクリルモノマー中にNaOH水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、該第1工程で形成された該水系/油系エマルジョンをNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンを形成する第2工程と、該第2工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを含む該NaOH水溶液中にヘキサメチレンジアミンを添加し、混合・攪拌することにより、該水系/油系/水系エマルジョンの最外相の該NaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面にナイロン薄膜を形成する第3工程と、該第3工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、該水系/油系/水系エマルジョンの該スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にして該スチレン・アクリルモノマー相の内部に該NaOHを封入する第4工程とから構成されていることを特徴とする、紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法。
【請求項9】 紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造方法であって、NaOH水溶液を重合開始剤とセバコイシルジクロライドを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌して該スチレン・アクリルモノマー中にNaOH水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、該第1工程で形成された該水系/油系エマルジョンを、ヘキサメチレンジアミンを添加したNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンであって、最外相の該NaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面にナイロン薄膜を有するものを形成する第2工程と、該第2工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、該水系/油系/水系エマルジョンの該スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にして該スチレン・アクリルモノマー相の内部に該NaOHを封入する第3工程とから構成されていることを特徴とする、紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法。
【請求項10】 紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造方法であって、NaOH水溶液を重合開始剤とメチルセルロースを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌して該スチレン・アクリルモノマー中にNaOH水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、該第1工程で形成された該水系/油系エマルジョンを、NaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンを形成する第2工程と、該第2工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを含む該NaOH水溶液中にタンニンを添加し、混合・攪拌することにより、該水系/油系/水系エマルジョンの最外相の該NaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面にメチルセルロース薄膜を形成する第3工程と、該第3工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、該水系/油系/水系エマルジョンの該スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にして該スチレン・アクリルモノマー相の内部に該NaOHを封入する第4工程とから構成されていることを特徴とする、紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法。
【請求項11】 紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造方法であって、NaOH水溶液を重合開始剤とメチルセルロースを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌して該スチレン・アクリルモノマー中にNaOH水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、該第1工程で形成された該水系/油系エマルジョンを、タンニンを添加したNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンであって、最外相の該NaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面にメチルセルロース薄膜を有するものを形成する第2工程と、該第2工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、該水系/油系/水系エマルジョンの該スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にして該スチレン・アクリルモノマー相の内部に該NaOHを封入する第3工程とから構成されていることを特徴とする、紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法。
【請求項12】 該第1工程で用いる該NaOH水溶液中に予め界面活性剤を添加しておくことを特徴とする、請求項8〜11のいずれかの項に記載の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、段ボールシートを製造する際の中芯とライナとの接合に用いて好適の、紙製品の製造方法及び製造装置並びに紙接合用糊及び紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】両面段ボールシートを製造する際には、シングルフェーサ部で中芯とライナとを接合して片面段ボールシート(片段シート)をつくり、ダブルフェーサ部でこの片段シートの中芯にライナを接合して両面段ボールシート(単に、段ボールともいう)を完成させる。
【0003】図8図9はこのような段ボールシートを製造する従来の段ボール製造装置を説明するためのものであり、図8はシングルフェーサ部を説明するための模式断面図、図9はダブルフェーサ部を説明するための模式断面図である。また、図10は従来の段ボール製造装置に用いられている、段ボール糊(単に、糊ともいう)の製造方法を説明するための模式図である。
【0004】図8に示すように、段ボール製造装置にそなえられているシングルフェーサ部80は、芯紙4′を波型状に成型して中芯4を形成し、この中芯4の底部4Bと裏ライナ3とを糊7を媒体として接合させて片段シート8を製造するものであり、段ロール1A,1Bと、圧力ロール2と、糊付装置5とをそなえている。段ロール(上段ロール)1Aは円筒形のロールの表面にロールの回転軸方向に延びた凸部と凹部とが交互に配された波型の段1Dが形成されており、同様に、段ロール(下段ロール)1Bは円筒形のロールの表面にロールの回転軸方向に延びた凸部と凹部とが交互に配された波型の段1Eが形成されている。
【0005】段ロール1A,1Bの各段1D,1Eは、いずれも凸部,凹部が円弧状になっており、これらの凸部と凹部とが連続的かつ交互に組み合わせられて連続した波型を形成している。これらの段ロール1Aと段ロール1Bとは、成型部1Cにおいて段ロール1Aの段1Dと段ロール1Bの段1Eとが噛合して、これらの段ロール1A,1B間を走行する芯紙4′を波型状の段形状に形成するようになっている。
【0006】したがって、図8に示すように中芯4には、頂部4A及び底部4Bが中芯4の進行方向(即ち、長手方向)に向けて交互に連続して並ぶように形成される。段ロール1Aの前工程には、図示しない予熱装置が備えられ、段ロール1A,1Bには、11〜12kg/cm2程度の飽和蒸気圧が投入されており、各ロール表面温度は170〜180℃程度になっている。また、段ロール1Aと段ロール1Bとの間には、ニップ圧が加えられており、中芯4は、この熱と圧力とによって塑性変形されて波型状に成型されるようになっている。
【0007】糊付装置5は、液体状の糊7を貯蔵しうる容器5aと糊付ロール6A,6Bとから構成されており、糊付ロール6Aと糊付ロール6Bとは互いに接するように配設されている。糊7は、一般的には、図示しない製糊装置において後述するような方法で製造された後、容器5aに供給されるようになっている。糊付ロール6Aは、その周面6aの一部を容器5aに一定量溜めてある糊7に接触または浸しており、糊付ロール6Aが回転しながら、糊7をその周面6aに付着させ、その後この糊7を糊付ロール6Bの周面6bへ付着させる。
【0008】さらに、糊付ロール6Bから、段ロール1Bに案内されて走行する中芯4の底部4Bに糊7を塗布させるようになっている。また、圧力ロール2は、その表面2aが段ロール1Bの段1Eの凸部と圧接するように配設されており、この圧接部分が、中芯4の底部4Bと裏ライナ3とを接合させる接合部2Aとして構成されている。
【0009】したがって、糊7が塗布された中芯4の底部4Bは、裏ライナ3と接合部2Aにて接合がなされ、片段シート8となって次工程へ搬送されるようになっている。圧力ロール2内には段ロール1A,1Bと同様に、11〜12kg/cm2程度の飽和蒸気圧が投入されておりロール表面温度は170〜180℃程度になっている。また、段ロール1Bと圧力ロール2との間には、高いニップ圧が加えられているので、接合部2Aにおいてなされる接合は、熱と圧力により圧着に近い状態でなされる。
【0010】なお、シングルフェーサ部80の段ロール1A,段ロール1B,圧力ロール2A,糊付ロール6A,糊付ロール6Bは、すべて同期回転するように設定されている。次に、図9を用いて、ダブルフェーサ部について説明する。図9に示すように、段ボール製造装置にそなえられているダブルフェーサ部90は、段ボール製造工程のうち前述のシングルフェーサ部80にて製造された片段シート8の頂部8Aに表ライナ9を糊12を媒体として接合させる装置であり、搬送部91,接合部92,糊付装置10とから構成されている。搬送部91は、前工程から搬送されてきた片段シート8と表ライナ9を接合部92へ搬送し、次工程へ搬出するように機能し、搬送ロール16,17,18と綿ベルト14とから構成されている。また、接合部92は、搬送されてきた片段シート8と表ライナ9を貼り合わせるもので、熱板13と加圧ロール15とから構成されている。
【0011】さらに、糊付装置10は、液体状の糊12を貯蔵しうる容器10aと糊付ロール11A,11Bとから構成され、糊付ロール11Aと糊付ロール11Bとは、互いに接するように配設されている。糊付ロール11Aは、その周面11aの一部を容器10aに一定量溜めてある糊12に接触または浸しており、糊付ロール11Aが回転しながら、糊12をその周面11aに付着させ、この糊12を糊付ロール11Bの周面11bへ付着させる。
【0012】さらに、糊12は糊付ロール11Bから片段シート8の頂部8Aに塗布されるようになっている。搬送部91は、糊7が塗布された片段シート8を搬送し、接合部92は、接合開始箇所92aにおいて表ライナ9と片段シート8との貼合せを開始し、出側92bで完了するようになっている。この接合部92には、段ボールシート19の進行方向に熱板13と加圧ロール15とが複数個並べて設置され、加圧ロール15は、綿ベルト14を介して片段シート8と表ライナ9とを熱板13方向に押しつけるようになっている。
【0013】そして、片段シート8の頂部8Aと表ライナ9とが接する状態を保持しながら片段シート8と表ライナ9とが搬送されて、接合されるようになっている。ところで、加圧ロール15は、表ライナ9を熱板13の上面13aに押しつけ、熱板13の熱を表ライナ9に伝達し、糊12のゲル化を促進し、片段シート8と表ライナ9との接合を促進するように機能している。片段シート8と表ライナ9との接合について、綿ベルト14の自重のみによって片段シート8と表ライナ9を熱板13方向に押しつける方法では、片段シート8と表ライナ9への押下力が不足し、熱板13の上面13aからの熱を表ライナ9越しに十分伝達することができない。そこで、両者を良好に接合するため、加圧ロール15を用いて綿ベルト14の内面14B側から押圧力を加え、熱板13から片段シート8の頂部8Aへの熱伝達を向上させることによって、糊12のゲル化を促進させて接合を短時間で完了させるようになっている。
【0014】片段シート8は、綿ベルト14の外面14aと片段シート8の面8Bとの間の摩擦力により搬送ロール17,18の周速と同じ搬送速度で搬送されるようになっているが、綿ベルト14には、搬送する際片段シート8を傷つけないように柔軟な材料が一般に用いられる。糊付ロール11A,11B、搬送ロール16,17,18はすべての回転軸が平行で同期回転しており、綿ベルト14の内面14bは、搬送ロール17,18の外周上を滑ることなく回転するようになっている。
【0015】さらに、糊7,12の製造方法について図10を用いて説明する。糊7,12は従来使用されている段ボール接合用の糊であり、その成分は略同一であるため、以下では糊7の説明をする。糊7は、澱粉21をベースとして、水20,水酸化ナトリウム(以後NaOHと呼ぶ)22A,硼砂(ホウ酸ナトリウム)23等から構成されている。
【0016】まず、水20に所定量の澱粉21を入れて、70〜80℃に加熱し、ペースト状澱粉21Aになるまで攪拌する〔工程1:図10(a)〕。次に、別途、NaOH22Aと水20Aとから生成しておいたNaOH水溶液22を工程1で作ったペースト状澱粉21A中に徐々に添加し、攪拌・混合して溶液21Bを生成する〔工程2:図10(b)〕。さらに、別途、所定量の水20Bに硼砂23を添加した後、澱粉24を加えて作った溶液24Aに工程2で製造した溶液21Bを徐々に加え攪拌して、糊7が製造される〔工程3:図10(c)〕。この糊7の最終的な重量割合は水100に対し、澱粉20〜30、NaOHは1以下程度である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のような段ボール製造装置では、段ボールの生産性を向上させるために装置の高速化が要望されている。この場合、ダブルフェーサ部90のライン速度の高速化をいかに実現するかが課題となる。つまり、ダブルフェーサ部90では、片段シート8の中芯4と表ライナ9とを接合する糊の乾燥に時間を要し、ライン速度を速めるためには、糊の乾燥完了時間を短くする(即ち、糊の乾燥速度をアップにさせる)か、あるいは、乾燥ライン(接合部)を長くして、接合部分の乾燥ラインへの滞留時間を確保する必要がある。
【0018】後者の場合、即ち、シートが糊の乾燥のためのライン(接合部)を長くすると、製造装置の規模が大きくなってしまい、さまざまなコスト増を招くため好ましくない。そこで、前者の手段を実現することになるが、糊の乾燥速度をアップさせるためには、糊12の製造過程において、糊のゲル化温度を制御する目的で添加されているNaOH22A濃度を高くすることや、接合部92における糊12の乾燥加熱温度を上昇させることが考えられる。
【0019】しかし、糊に含まれるNaOH22Aの濃度を増すと、より低い温度で糊12がゲル化し、いわゆる糊玉(通常であれば一様に分散する澱粉が、それ自体が集中して白色状のかたまりとなり、糊の役目を果たさなくなる状態)になる傾向があり、接合が不十分になってしまうという課題がある。また、接合部92における糊12の乾燥加熱温度を上昇させるには、ダブルフェーサ部90の熱板13に封入している蒸気温度を上昇させる必要があるが、糊12の加熱乾燥が、熱伝導率の悪い表ライナ9越しに接触熱伝達によって行われているため、糊12を加熱するために結果的に多くの熱量が必要となるという課題がある。
【0020】このような課題は、シングルフェーサ部80においても同様に発生する。本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、装置の大型化を抑えながら、しかも熱量の増加などランニングコストの増加を招かないようにしながら段ボールをはじめとした紙製品の生産性を向上することができるようにした、紙製品の製造方法及び製造装置並びに紙接合用糊及び紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1記載の本発明の紙製品の製造方法は、糊を用いて紙を接合して紙製品を製造する紙製品製造方法であって、NaOHが高濃度に封入されたマイクロカプセルを該糊に混入して構成したマイクロカプセル混入糊を、該紙の張り合わせ箇所に塗布する塗布工程と、該塗布工程で塗布された該糊に外部から刺激を与えて該糊に混入された該マイクロカプセルを破壊し該紙の接合を行なう接合工程とをそなえていることを特徴としている。
【0022】請求項2記載の本発明の紙製品の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、該紙製品は段ボールであって、該接合工程では該段ボールの中芯とライナとを接合することを特徴としている。請求項3記載の本発明の紙製品の製造方法は、請求項1又は2記載の製造方法において、該接合工程では、該塗布工程で塗布された該糊に、圧力,熱,振動,音波,電界のいずれかによって刺激を与えることにより、該マイクロカプセルの破壊を行なうことを特徴としている。
【0023】請求項4記載の本発明の紙製品の製造装置は、糊を用いて紙を接合して紙製品を製造する紙製品の製造装置であって、NaOHが高濃度に封入されたマイクロカプセルを該糊に混入して構成したマイクロカプセル混入糊を、該紙の張り合わせ箇所に塗布する塗布部と、該塗布部により塗布された該糊に外部から刺激を与えて該糊に混入された該マイクロカプセルを破壊し該紙の接合を行なう接合部とをそなえていることを特徴としている。
【0024】請求項5記載の本発明の紙製品の製造装置は、請求項4記載の紙製品の製造装置において、該紙製品は段ボールであって、該接合部では該段ボールの中芯とライナとを接合することを特徴としている。請求項6記載の本発明の紙製品の製造装置は、請求項4又は5記載の製造装置において、該接合部では、該塗布部により塗布された該糊に、圧力,熱,振動,音波,電界のいずれかによって刺激を与えることにより、該マイクロカプセルの破壊を行なうことを特徴としている。
【0025】請求項7記載の本発明の紙接合用糊は、紙の接合に用いる糊であって、NaOHが高濃度に封入されたマイクロカプセルが混入されていることを特徴としている。請求項8記載の本発明の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法は、紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造方法であって、NaOH水溶液を重合開始剤とセバコイシルジクロライドを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌して該スチレン・アクリルモノマー中にNaOH水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、該第1工程で形成された該水系/油系エマルジョンをNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンを形成する第2工程と、該第2工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを含む該NaOH水溶液中にヘキサメチレンジアミンを添加し、混合・攪拌することにより、該水系/油系/水系エマルジョンの最外相の該NaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面にナイロン薄膜を形成する第3工程と、該第3工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、該水系/油系/水系エマルジョンの該スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にして該スチレン・アクリルモノマー相の内部に該NaOHを封入する第4工程とから構成されていることを特徴としている。
【0026】請求項9記載の本発明の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法は、紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造方法であって、NaOH水溶液を重合開始剤とセバコイシルジクロライドを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌して該スチレン・アクリルモノマー中にNaOH水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、該第1工程で形成された該水系/油系エマルジョンをヘキサメチレンジアミンを添加したNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンであって、最外相の該NaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面にナイロン薄膜を有するものを形成する第2工程と、該第2工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、該水系/油系/水系エマルジョンの該スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にして該スチレン・アクリルモノマー相の内部に該NaOHを封入する第3工程とから構成されていることを特徴としている。
【0027】請求項10記載の本発明の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法は、紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造方法であって、NaOH水溶液を重合開始剤とメチルセルロースを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌して該スチレン・アクリルモノマー中にNaOH水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、該第1工程で形成された該水系/油系エマルジョンを、NaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンを形成する第2工程と、該第2工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを含む該NaOH水溶液中にタンニンを添加し、混合・攪拌することにより、該水系/油系/水系エマルジョンの最外相の該NaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面にメチルセルロース薄膜を形成する第3工程と、該第3工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、該水系/油系/水系エマルジョンの該スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にして該スチレン・アクリルモノマー相の内部に該NaOHを封入する第4工程とから構成されていることを特徴としている。
【0028】請求項11記載の本発明の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法は、紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造方法であって、NaOH水溶液を重合開始剤とメチルセルロースを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌して該スチレン・アクリルモノマー中にNaOH水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、該第1工程で形成された該水系/油系エマルジョンを、タンニンを添加したNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンであって、最外相の該NaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面にメチルセルロース薄膜を有するものを形成する第2工程と、該第2工程で形成された該水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、該水系/油系/水系エマルジョンの該スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にして該スチレン・アクリルモノマー相の内部に該NaOHを封入する第3工程とから構成されていることを特徴としている。
【0029】請求項12記載の本発明の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法は、請求項8〜11のいずれかの項に記載のマイクロカプセル製造方法において、該第1工程で用いる該NaOH水溶液中に予め界面活性剤を添加しておくことを特徴としている。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。(A)第1実施形態の説明図1図3は、本発明の第1実施形態にかかる紙製品の製造方法及び製造装置並びに紙接合用糊及び紙接合用糊のマイクロカプセル(単に、カプセルともいう)製造方法を示す図であり、図1はそのマイクロカプセル製造方法を説明するための模式図、図2はその製造装置にかかるシングルフェーサ部を説明する模式断面図、図3はその製造装置にかかるダブルフェーサ部を説明する模式断面図である。
【0031】まず、本実施形態にかかる紙製品の製造装置から説明する。なお、本実施形態では紙製品として段ボール(両面段ボールシート)を製造するので、紙製品の製造装置を段ボール製造装置と呼ぶ。本段ボール製造装置は、使用する紙接合用糊(段ボール糊、単に糊ともいう)にNaOHが封入されたマイクロカプセルが混入されている点及びこのマイクロカプセルの被膜を破壊する手段が設けられている点に特徴があり、それ以外の部分は、従来技術のものと同様に構成されている。
【0032】はじめに、本段ボール製造装置にそなえられているシングルフェーサ部80Aについて説明する。図2に示すように、シングルフェーサ部80Aは、成型部1Cにおいて芯紙4′を波型状に成型し中芯4を形成して、この中芯4の底部4Bと裏ライナ3とを糊7aを媒体として接合させるものであり、段ロール1A,1B,圧力ロール2,糊付装置(塗布部)5A,被膜破壊装置36とから構成されている。段ロール1Aは円筒形のロールの表面に回転軸方向に延びた凸部と凹部とが交互に配された波型の段1Dが形成されており、同様に、段ロール1Bは円筒形のロールの表面に回転軸方向に延びた凸部と凹部とが交互に配された波型の段1Eが形成されている。
【0033】段ロール1Aの段1D及び段ロール1Bの段1Eは、いずれも凸部,凹部が円弧状になっており、これらの凸部と凹部とが連続的かつ交互に組み合わせられて連続した波型を形成している。これらの段ロール1Aの段1Dと段ロール1Bの段1Eとは、成型部1Cにおいて互いに噛合しており、段ロール1Aの段1Dの凸部と段ロール1Bの段1Eの凹部との噛合により中芯4の頂部4Aを形成し、段ロール1Aの段1Dの凹部と段ロール1Bの段1Eの凸部との噛合により中芯4の底部4Bを形成するようになっている。こうして形成された中芯4の頂部4Aと底部4Bとは図2に示すように、中芯4の進行方向(長手方向)に直行して交互に連続して形成されるようになっている。
【0034】これらの段ロール1A,1Bからなる成型部1Cの前工程には、図示しない予熱装置がそなえられ、芯紙4′は予め加熱されて成型部1Cに送られてくる。さらに、段ロール1A,1Bには、11〜12kg/cm2程度の飽和蒸気圧が投入されており、各ロール表面温度は170〜180℃程度になっている。また、段ロール1Aと段ロール1Bとの間にはニップ圧が加わっている。これにより予め加熱された芯紙4′は熱と圧力をさらに加えられることにより塑性変形されて確実に波型状に成型されるようになっている。
【0035】糊付装置(塗布部)5Aは、液体状の糊7aを貯蔵しうる容器5aと糊付ロール6A,6Bとから構成されている。糊7aは、図1にて後述するような製造方法によって高濃度のNaOH27が封入されたNaOH封入マイクロカプセル30と糊(一般的な澱粉糊)7とから構成されており、図示しない製糊装置において製造された糊7aは容器5a内に供給されるようになっている。糊付ロール6Aは、その周面6aの一部を容器5aに一定量溜めてある糊7aに接触または浸しており、糊付ロール6Aが回転しながら糊7aをその周面6aに付着させ、接触部6Cにおいて糊付ロール6Bの周面6bへ付着させる。このため、糊付ロール6Aと糊付ロール6Bとは、接触部6CにおいてNaOH封入マイクロカプセル30を破壊しないような状態で糊7aを介して接触するように配設されている。
【0036】また、糊付ロール6Bは一方で、段ロール1Bの段1Dの凸部と糊付ロール6Bとが、やはり、NaOH封入マイクロカプセル30を破壊しないような状態で糊7aを介して接触しており、この糊付ロール6Bと段ロール1Bとの間において、波型状に成型された中芯4の底部4Bに糊7aを塗布するようになっている。
【0037】また、圧力ロール2は、中芯4の底部4Bと裏ライナ3とを熱及び圧力により、圧着に近い状態で接合させるように、接合部2Aにおいて、段ロール1Bと圧接する状態に配設されている。被膜破壊装置36は、糊7aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30を熱や音波などのエネルギーを加えることによって破壊するためのものであり、接合部2Aの上流側に近接して配設されている。ここでは、被膜破壊装置36は、近赤外線を中芯4の底部4Bに塗布された糊7aに照射し、輻射エネルギーによって糊7aを溶融させ、糊7aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30に被膜温度を上昇させて熱によって溶融させ、NaOH封入マイクロカプセル30の外殻である被膜(ナイロン薄膜29+スチレン・アクリルモノマー相50b)を破壊するようになっている。
【0038】そして、封入された高濃度のNaOHが周囲の糊7に流出して即座に化学反応を起こしNaOH濃度の高い糊7bとなり、糊7よりも低い温度で急速にゲル化が促進され、糊化するようになっている。なお、段ロール1Bと圧力ロール2との間には、高いニップ圧が加えられるため、NaOH封入マイクロカプセル30は、この圧力によっても破壊することができるが、接合部2Aの直前で糊7bのゲル化を急速に進めるために、接合部2Aの手前に被膜破壊装置36を配設することによって、接合部2Aに到達する前にNaOH濃度の高い糊7bを確実に形成するようになっている。
【0039】この場合、流出したNaOHは、時間が経つと糊玉になってしまうが、被膜破壊装置36は、接合部2Aの直前に設けられているので、このようなことはない。また、被膜破壊装置36で破壊できなかったNaOH封入マイクロカプセル30があった場合も、上記ニップ圧により破壊できるので、NaOH封入マイクロカプセル30は確実に有効利用されるようになっている。
【0040】また、従来技術と同様に、圧力ロール2内には飽和水蒸気が投入されているが、本実施形態では、NaOH封入マイクロカプセル30を用いることにより、従来に比べてNaOH濃度の高い糊7bを生成し、ゲル化を従来より速い速度で進行させるため、従来、糊のゲル化を促進させるために加熱していた段ロール1b,圧力ロール2の温度を、従来よりも低い温度とすることが可能となる。従って、段ロール1b,圧力ロール2を加熱するのに要する熱量が節約できるようになっている。
【0041】このように、糊7bが付着した中芯4の底部4Bは、裏ライナ3と接合部2Aにて接合がなされ、片段シート8となって次工程へ搬送されるようになっている。次に、図3を用いて、ダブルフェーサ部について説明する。図3に示すように、段ボール製造装置にそなえられているダブルフェーサ部90Aは、段ボール製造工程のうち前述のシングルフェーサ部80Aにて製造された片段シート8の頂部8Aに表ライナ9を糊12bを媒体として接合させる装置であり、搬送部91,接合部92A,糊付装置(塗布部)10Aとから構成されている。搬送部91は、前工程から搬送されてきた片段シート8と表ライナ9を接合部92Aへ搬送して接合された段ボールシート19を、次工程へ搬出するためのもので、搬送ロール16,17,18と綿ベルト14とから構成されている。
【0042】また、接合部92Aは、搬送されてきた片段シート8と表ライナ9とを貼り合わせるためのもので、熱板13Aと加圧ロール15とから構成されている。さらに、糊付装置10Aは、糊12aを貯蔵しうる容器10aと糊付ロール11A,11Bとから構成されている。糊付ロール11Aは、その周面11aの一部を容器10aに一定量溜めてある糊12aに接触または浸しており、糊付ロール11Aが回転しながら糊12aをその周面11aに付着させ、接触部11Cにおいて糊付ロール11Bの周面11bへ付着させながら搬送する。
【0043】ところで、糊12aは、シングルフェーサ部の糊7aと同じ方法によって製造された高濃度のNaOH水溶液27が封入されたNaOH封入マイクロカプセル30と糊(一般的な澱粉糊)12とから構成されており、図示しない製糊装置において製造された糊12aは容器10aに供給されるようになっている。糊付ロール11Aは、その一部を容器10aに溜めてある糊12aに接触または浸しており、糊付ロール11Aが回転しながら、糊12aをその周面11aに付着させ、接触部11Cにおいて糊付ロール11Bの周面11bへ付着させながら搬送する。このため、糊付ロール11Aと糊付ロール11Bとは、接触部11CにおいてNaOH封入マイクロカプセル30を破壊しないような状態で糊12aを介して接触するように配設されている。
【0044】また、糊付ロール11Bはこの一方で、接触部110において、片段シート8の頂部8Aに接するように配設されており、この接触部110において、片段シート8の頂部8Aに糊12aを塗布させるようになっている。被膜破壊装置37は、被膜破壊装置36と同様の機能を有しており、接合部92Aの上流側に近接して配設されている。ここでは、被膜破壊装置37は、近赤外線を糊12aの塗布された片段シート8の頂部8Aに照射し、輻射エネルギーにより、NaOH封入マイクロカプセル30の被膜温度を上昇させて熱によって溶解させ、糊12aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30を破壊するようになっている。
【0045】糊12aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30は、この被膜破壊装置37によって破壊され、封入された高濃度のNaOH水溶液の芯物質27が周囲の糊12と即座に化学反応を起こし、NaOH濃度の高い糊12bとなり、糊12よりも低い温度で急速にゲル化が促進され、糊化するようになっている。糊12bを塗布された片段シート8は搬送部91によって接合部92Aへ搬送され、接合開始部92aにおいて、表ライナ9と貼合せが開始され、接合部92Aの出側92bで完了するようになっている。
【0046】この接合部92において、図3中で段ボールシート19の走行経路の下側には熱板13Aが複数個並べて設置され、また、走行経路の上側には、綿ベルト14の上部に加圧ロール15が複数個並べて設置されており、この熱板13Aと加圧ロール15の間に片段シート8と表ライナ9とが片段シート8の頂部8Aと表ライナ9とが向き合うように配置されながら搬送されるようになっている。
【0047】この加圧ロール15は、綿ベルト14の内面14B側から片段シート8の面8Bを熱板13A方向に押下し、片段シート8と表ライナ9とを熱板13の表面13aに押しつけることによって、表ライナ9越しに熱板13Aの表面13aから表ライナ9への接触熱伝達の向上を図っている。また、加圧ロール15,熱板13Aは、片段シート8及び表ライナ9の幅方向に対応する長さを有している。
【0048】そして、熱板13Aで片段シート8の頂部8Aに付着された糊12bを加熱乾燥しながら段ボールシート19を製造するように構成されている。ところで、破壊され流出したNaOHは、時間が経つと糊玉になってしまうが、被膜破壊装置37は、接合部92Aの直前に設けられているので、このようなことはない。また、被膜破壊装置37で破壊できなかったNaOH封入マイクロカプセル30があった場合も、上記の加圧ロール15からの圧力により破壊できるので、NaOH封入マイクロカプセル30は確実に有効利用されるようになっている。
【0049】片段シート8は、綿ベルト14の外面14aとの間の摩擦力により搬送ロール17,18の周速と同じ搬送速度で搬送されるようになっており、綿ベルト14には、片段シート8を傷つけないように柔軟な材料が一般に用いられる。ここで、糊7a,12aの製造方法について説明するが、糊7aと糊12aとは、略同一であるため、以下では糊7aについて説明をする。
【0050】糊7aは、糊7とNaOH封入マイクロカプセル30とから構成されており、糊7については、従来技術と同様に製造される。つまり、まず、水20に所定量の澱粉21を入れて、70〜80℃に加熱し、ペースト状澱粉21Aになるまで攪拌する〔工程1:図10(a)〕。次に、別途、NaOH22Aと水20Aとから生成しておいたNaOH水溶液22を工程1で作ったペースト状澱粉21A中に徐々に添加し攪拌混合し、溶液21Bを生成する〔工程2:図10(b)〕。次に、別途、所定量の水20Bに硼砂23を添加した後、澱粉24を加えて作った溶液24Aに工程2で製造した溶液21Bを徐々に加え攪拌して、糊7が製造される〔工程3:図10(c)〕。この糊7の最終的な重量割合は水100に対し、澱粉20〜30、NaOHは1以下程度である。
【0051】次にNaOH封入マイクロカプセル30の製造方法について説明する。NaOH封入マイクロカプセル30は、図1に示すように、封入すべき高濃度のNaOH水溶液の芯物質27を、重合開始剤(図示せず)とセバコイシルジクロライド26aを含むスチレン・アクリルモノマー26中に添加後、混合・攪拌することによる機械剪断力を作用させて、スチレン・アクリルモノマー26中にNaOH水溶液の微小液滴(水系/油系エマルジョン)27aを形成させる〔第1工程:図1(a)〕。
【0052】このとき、微小液滴27aの径を調整したり、微小液滴27aを安定化させるために、必要に応じて、図示しない界面活性剤を所要量添加してもよい。次に、図1(a)において形成した微小液滴27aを、別途用意したNaOH水溶液27A中に添加後、再び混合して、攪拌することによる機械剪断力を作用させて、NaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョン27Bを形成する〔第2工程:図1(b)〕。
【0053】さらに、最外相のNaOH水溶液27Aにヘキサメチレンジアミン28を添加後、混合・攪拌すると、スチレン・アクリルモノマー26中のセバコイシルジクロライド26aと最外相のNaOH水溶液27A中のヘキサメチレンジアミン28が反応して、スチレン・アクリルモノマー相(液相)50aと最外相のNaOH水溶液27Aとの界面にナイロン薄膜29が形成される〔第3工程:図1(c)〕。
【0054】そして、図1(c)で形成した水系/油系/水系エマルジョン27Bを加熱して、スチレン・アクリルモノマー26を重合反応させることによって、スチレン・アクリルモノマー相(液相)50aをスチレン・アクリルモノマー相(固相)50bにして、高濃度のNaOHを封入したマイクロカプセル30を完成させる〔第4工程:図1(d)〕。
【0055】なお、スチレン・アクリルモノマー相50aと最外相のNaOH水溶液27Aとの界面にナイロン薄膜29を形成するのは、スチレン・アクリルモノマー相50aの重合膜にあるピンホール状の欠陥などから封入したNaOHが外部へしみ出すおそれがあり、これを防止するためである。こうした上で、スチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にしてマイクロカプセル30を形成することにより、内部に高濃度のNaOHの芯物質27を確実に封入するように構成されている。
【0056】さらに、本実施形態において用いるスチレン・アクリルモノマー26は、温度、圧力などによる被膜の破壊条件を大きく変化させることができる物質として最良と考えられるが、例えば、ポリエステルなど、モノマーが液状である他の物質を用いてもよい。本発明の第1実施形態としての紙製造装置は、上述のように構成されているので、以下のように動作する。
【0057】まず、図2を用いて、シングルフェーサ部80Aでの片段シート8が製造されるまでの動作を説明する。芯紙4′は、予熱された後(予熱装置は省略)、図2中で段ロール1Aの上部に供給され、段ロール1Aの段1Dに接しながら段ロール1Aの回転に同期して時計回りに回転し、成型部1Cに搬送される。成型部1Cでは段ロール1Aと半時計回りに回転する段ロール1Bとによって芯紙4′を波型状の中芯4に成型するための処理が行われる。すなわち、段ロール1Aの段1Dの凸部と段ロール1Bの段1Eの凹部とが噛合して中芯4の頂部4Aが成型され、また、段ロール1Aの段1Dの凹部と段ロール1Bの段1Eの凸部とが噛合して中芯4の底部4Bが成型される。
【0058】中芯4は、この成型部1Cにおいて波型状に成型された後、段ロール1Bの段1Eの凸部に底部4Bを、段ロール1Bの段1Eの凹部に頂部4Aをそれぞれ嵌合した状態で段ロール1Bとともに、図3において半時計回りに回転しながら搬送される。そして、中芯4の底部4Bは、段ロール1Bの段1Eの凸部に嵌合した状態のまま接触部70において、糊付装置5Aの糊付ロール6Bと接し、NaOH封入マイクロカプセル30を含んだ糊7aが塗布される。
【0059】さらに、段ロール1Bが回転して、圧力ロール2との接合部2Aに近接した上流側に設けられた被膜破壊装置36が中芯4の底部4Bに塗布された糊7aに、近赤外線を照射して、輻射エネルギーによってNaOH封入マイクロカプセル30の被膜温度を上昇させ、熱によって溶解させて、糊7aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30の被膜を破壊すると、NaOH封入マイクロカプセル30内の高濃度のNaOH水溶液27が糊7と通常よりも急速なゲル化反応を起こし、糊7bとなる。
【0060】なお、被膜破壊装置36は、近赤外線に限定されず、他のエネルギーを加えるものでもよく、電子線や超音波などによって代用することもできる。このとき、電子線の場合には、電子エネルギーにより被膜を直接破壊することになり、超音波の場合には、振動エネルギーを利用して被膜を破壊することになる。さらに、図2中で、時計回りに回転する圧力ロール2の右下側から圧力ロール2の表面2aに巻き付きながら供給されてきた、裏ライナ3と中芯4の底部4Bとの接合が接合部2Aにおいて行われる。段ロール1Bと圧力ロール2との間には高いニップ圧が施され、また、段ロール1Bと圧力ロール2の表面は高温度に保持されているため、接合部2Aにおいて、裏ライナ3と中芯4とは圧着の状態で接合がなされ、片段シート8となって次工程へ搬送されていく。
【0061】なお、糊7bは、従来の糊7に比べてNaOH濃度が高いため、低温でもゲル化が進行するので、段ロール1Bと圧力ロール2内にそれぞれ投入されている飽和水蒸気は、従来と比較して低い温度であっても糊7bを短時間で乾燥させることができる。次に、図3を用いて、ダブルフェーサ部90Aで段ボールシート19が製造されるまでの動作を説明する。
【0062】片段シート8は図示略の予熱装置にて予熱された後、頂部8Aが糊付ロール11Bに接するように搬送され、接触部110にて、糊付装置10Aの糊付ロール11BからNaOH封入マイクロカプセル30を含んだ糊12aが塗布される。さらに、接合部92Aに近接した上流側に設けられた被膜破壊装置37が片段シート8の頂部8Aに塗布された糊12aに、近赤外線を照射して、輻射エネルギーによってNaOH封入マイクロカプセル30の被膜温度を上昇させ、熱によって溶解させて、糊12aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30を破壊すると、NaOH封入マイクロカプセル30内の高濃度のNaOH水溶液27が糊12と通常よりも急速なゲル化反応を起こし、NaOH濃度の高い糊12bとなる。
【0063】なお、被膜破壊装置37は、近赤外線に限定されず、他のエネルギーを加えるものでもよく、電子線や超音波などによって代用することもできる。このとき、電子線の場合には、電子エネルギーにより被膜を直接破壊することになり、超音波の場合には、振動エネルギーを利用して被膜を破壊することになる。その後、さらに搬送され、綿ベルト14の外面14aに誘導されながら、接合部92Aに達する。
【0064】一方、表ライナ9は図示略の予熱装置にて予熱された後、片段シート8とは別の方向から搬送ロール16に誘導されながら搬送され、接合開始部92aに達する。この接合開始部92aにおいて、前述の片段シート8の頂部8Aと接し、片段シート8と表ライナ9との接合が開始される。その後、片段シート8と表ライナ9とは、加圧ロール15の荷重によって加圧された綿ベルト14と熱板13Aとの間を、片段シート8の面8Bと綿ベルト14の外面14aとの摩擦抵抗によって、ほぼ水平方向に搬送されながら接合部92A中を進み、片段シート8の頂部8Aと表ライナ9とが接合されて、接合部92Aの出側92bにて段ボールシート19となって次工程へ搬送されていく。
【0065】このとき、糊12bは熱板13Aの上面13aから表ライナ9越しの接触熱伝達を受けて、加熱されることによって糊12bの水分が乾燥してゲル化をさらに促進させるが、糊12b内のNaOH濃度が従来の糊12に比べて高いため、従来より低い温度でも容易にゲル化が進行し、従来に比べて短時間でまた、低温で接合することができる。
【0066】したがって、糊にマイクロカプセルを混入することにより、段ボール製造装置の高速化を促進することができるようになり、段ボールの生産性を向上させることができる。また、シングルフェーサ部80Aにおいては、段ロール1Bと圧力ロール2に充填されている飽和水蒸気の温度を通常より低く設定することができる。さらに、ダブルフェーサ部90Aにおいては、糊12b中のNaOH濃度が従来に比べて高いため、糊12bのゲル化速度が速く、熱板13Aの上面13aは、従来必要であった温度まで上昇させなくてもよくなる。したがって、熱板13Aの上面13aを従来の温度まで上昇させた場合には、熱板13Aの総延長が従来に比べて短くてすむようになる。
【0067】本実施形態では、シングルフェーサ部80Aでの段ロール1Bと圧力ロール2との間のニップ圧に頼ることなく被膜破壊装置36によって、接合直前にNaOH封入マイクロカプセル30を確実に破壊することができるので、このような点から上記ニップ圧を減少させることができる。また同様に、ダブルフェーサ部90Aにおいても、被膜破壊装置37の設置により、加圧ロール15による加圧を通常より低く設定することができる。
【0068】さらに、被膜破壊装置36,37で破壊できなかったNaOH封入マイクロカプセル30があった場合でも、段ロール1Bと圧力ロール2との間のニップ圧あるいは加圧ロール15と熱板13Aとの間の圧力により破壊することができるので、NaOH封入マイクロカプセル30は確実に有効利用できる。ところで、本実施形態中の図1で説明した、NaOH封入マイクロカプセル30の製造工程は、第2工程と第3工程とを同一工程として行なうこともできる。即ち、第1工程〔図1(a)〕で形成された水系/油系エマルジョンを、ヘキサメチレンジアミンを添加したNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌して、最外相にナイロン薄膜を有するNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンを形成する(この処理が第2工程となる)。そして、この後、第1実施形態の第4工程〔図1(d)〕の処理(この場合、この処理が第3工程となる)を行うようにする。このようにしても、NaOH封入マイクロカプセル30を製造することができる。(B)第2実施形態の説明本実施形態は、紙接合用糊に混入するマイクロカプセル製造に用いる材料の一部が第1実施形態と異なり、その他の構成・動作は第1実施形態と同様である。つまり、第1実施形態では、その第1工程において、セバコイシルジクロライド26aを含むスチレン・アクリルモノマー26中に微小液滴27aを形成させているのに対して、本実施形態では、メチルセルロース31aを含むスチレン・アクリルモノマー31中に微小液滴32aを形成させている。また、その第3工程開始時に、NaOH水溶液32Aにヘキサメチレンジアミン28を添加しているのに対して、本実施形態では、タンニン33を添加している。これにより、第3工程において最外相のNaOH水溶液32Aとスチレン・アクリルモノマー相50cとの界面には、メチルセルロース薄膜34が形成される。
【0069】したがって、以下では、NaOH封入マイクロカプセル製造方法のみについて説明する。本実施形態において使用しているNaOH封入マイクロカプセル35は、図4に示すように、封入すべきNaOH水溶液の芯物質32を、重合開始剤(図示せず)とセバコイシルジクロライド31aを含むスチレン・アクリルモノマー31中に添加後、混合・攪拌して、スチレン・アクリルモノマー31中にNaOH水溶液の微小液滴(水系/油系エマルジョン)32aを形成させる〔第1工程:図4(a)〕。このとき、微小液滴32aの径を調整したり、微小液滴32aを安定化させるために、必要に応じて図示しない界面活性剤を添加してもよい。
【0070】次に、第1工程〔図4(a)〕にて形成した微小液滴32aを、別途用意したNaOH水溶液32A中に添加後、再び混合して、攪拌することによる機械剪断力を作用させて、NaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョン32Bを形成する〔第2工程:図4(b)〕。
【0071】さらに、最外相のNaOH水溶液32Aにタンニン33を添加後、再び混合・攪拌すると、スチレン・アクリルモノマー31中のセバコイシルジクロライド31aと最外相のNaOH水溶液32A中のタンニン33が反応して、スチレン・アクリルモノマー相(液相)50cと最外相のNaOH水溶液32Aとの界面にメチルセルロース薄膜34が形成される〔第3工程:図4(c)〕。
【0072】そして、第3工程〔図4(c)〕で形成した水系/油系/水系エマルジョン32Bを加熱することにより、スチレン・アクリルモノマー31を重合反応させ、スチレン・アクリルモノマー相(液相)50cをスチレン・アクリルモノマー相(固相)50dにして、NaOH封入マイクロカプセル35を完成させる〔第4工程:図4(d)〕。
【0073】本実施形態では、このように第1実施形態とは一部異なる材料を用いたため、製造されるマイクロカプセル35も第1実施形態とはその最外相が異なる物質となるが、この最外相の物理的性質は第1実施形態のものと同様であるので、中芯4の底部4Bと裏ライナ3との接合時や片段シート8と表ライナ9との接合時に、接合開始直前に被膜破壊装置36又は被膜破壊装置37により、このマイクロカプセル35を破壊することでNaOHを有効に利用しながら第1実施形態と同様の作用・効果を得ることができるのである。
【0074】また、第3工程において、スチレン・アクリルモノマー相50dと最外相のNaOH水溶液27Aとの界面に形成するメチルセルロース薄膜34はナイロン薄膜29と同様に機能し、スチレン・アクリルモノマー相50dの重合膜にあるピンホール状の欠陥などによって、封入したNaOHが外部へしみ出すおそれを防止することができる。
【0075】このようにして第1実施形態と同様に、マイクロカプセル35の最外相にあるスチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にしてマイクロカプセル35を形成して、内部にNaOH水溶液の芯物質32を封入するので、高濃度のNaOH水溶液を容易にマイクロカプセル化できる。なお、本実施形態において用いるスチレン・アクリルモノマー31についても、温度、圧力などによる被膜の破壊条件を大きく変化させることができる物質として最良と考えられるが、例えば、ポリエステルなど、モノマーが液状である他の物質を用いてもよい。
【0076】ところで、本実施形態中で説明した、NaOH封入マイクロカプセル35の製造工程も、第1実施形態のNaOH封入マイクロカプセル30製造工程と同様に、第2工程と第3工程とを同一工程として行なうこともできる。即ち、第1工程〔図4(a)〕で形成された水系/油系エマルジョンを、タンニンを添加したNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌して、最外相にメチルセルロース薄膜を有するNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンを形成する(この処理が第2工程となる)。そして、この後、第2実施形態の第4工程〔図4(d)〕の処理(この場合、この処理が第3工程となる)を行うようにする。このようにしても、NaOH封入マイクロカプセル35を製造することができる。(C)第3実施形態の説明本実施形態は、シングルフェーサ部の構成の一部が第1実施形態と異なり、その他の構成・動作は第1実施形態と同様である。したがって、以下では、図5を用いてシングルフェーサ部のみについて説明する。なお、図2中で記述の符号と同一の符号は、同一もしくは略同一の部分を示しているので、その詳細な説明は省略する。
【0077】つまり、本実施形態では、図5に示すように、第1実施形態における被膜破壊装置36が除去されており、シングルフェーサ部80B自体は、従来技術のものと同様に構成されている。もちろん、本実施形態でも、糊付装置(塗布部)5Aで用いる糊7aは、第1実施形態中の図1にて示したような製造方法によって高濃度のNaOH水溶液が封入されたNaOH封入マイクロカプセル30と糊7とから構成されている。
【0078】糊7aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30は、接合部2Aにおいて段ロール1Bと圧力ロール2との間のニップ圧によって破壊されるようになっており、この破壊により、封入された高濃度のNaOHが周囲の糊7に流出して急速に化学反応を起こし、NaOH濃度の高い糊7bとなり、より低い温度でゲル化が促進されるようになっている。
【0079】本実施形態は、このように構成され、第1実施形態のシングルフェーサ80Aよりも簡素な構成によって、第1実施形態とほぼ同様に、NaOHを糊玉を生じさせることなく有効に利用できるようになり、装置の高速化を進めて生産性の向上を促進することができる。(D)第4実施形態の説明本実施形態は、ダブルフェーサ部の構成の一部が第1実施形態と異なり、その他の構成・動作は第1実施形態と同様である。したがって、以下では、図6を用いてダブルフェーサ部のみについて説明する。なお、図3中で記述の符号と同一の符号は、同一もしくは略同一の部分を示しているので、その詳細な説明は省略する。
【0080】つまり、本実施形態では、図6に示すように、第1実施形態における被膜破壊装置37が除去されており、ダブルフェーサ部90C自体は、従来技術のものと同様に構成されている。もちろん、本実施形態でも、糊付装置(塗布部)10Aで用いる糊12aは、第1実施形態中の図1にて示したような製造方法によって高濃度のNaOH水溶液が封入されたNaOH封入マイクロカプセル30と糊7とから構成されている。
【0081】糊7aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30は、接合部92Cにおいて加圧ロール15の圧力によって破壊されるようになっており、この破壊により、封入された高濃度のNaOHが周囲の糊12に流出して急速に化学反応を起こし、NaOH濃度の高い糊12bとなり、より低い温度でゲル化が促進されるようになっている。
【0082】本実施形態はこのように構成され、第1実施形態のダブルフェーサ90Aよりも簡素な構成によって、第1実施形態とほぼ同様にNaOHを糊玉を生じさせることなく有効に利用できるようになり、装置の高速化を進めて生産性の向上を促進することができる。(E)第5実施形態の説明本実施形態は、第4実施形態と同様に第1実施形態のダブルフェーサ部90Aにそなえられた被膜破壊装置37を除去しており、マイクロカプセル30の破壊は接合部92Bにおいて行なうようになっている。その他の構成・動作は第1,4実施形態と同様である。したがって、以下では、図7を用いてダブルフェーサ部90Bのみについて説明する。なお、図3中で記述の符号と同一の符号は、同一もしくは略同一の部分を示しているので、その詳細な説明は省略する。
【0083】もちろん、本実施形態でも、糊付装置(塗布部)10Aで用いる糊12aは、第1実施形態中の図1にて示したような製造方法によって高濃度のNaOH水溶液の芯物質27が封入されたNaOH封入マイクロカプセル30と糊7とから構成されている。本実施形態では、図7に示すように、第1実施形態における被膜破壊装置37,加圧ロール15,熱板13Aが除去され、格子電極38,高周波電源39が装備されている。ダブルフェーサ部90Bにおいて糊の乾燥加熱のために高周波電界40を用いることは、従来から知られている技術である(例えば、特公昭62−160232)。
【0084】糊7aに含まれるNaOH封入マイクロカプセル30は、接合部92Bにおいて、高周波電界40によって破壊される。即ち、段ボールシート19の進行方向(長手方向)に対して、ある角度で傾斜させて(+)極と(−)極の格子電極38を交互に数ユニット設置し、図示しない絶縁体によって支持された(+)極と接地した(−)極との間に高周波電源39より高周波電圧を与え、高周波電界40を発生させて誘電加熱により糊12aを加熱し、NaOHマイクロカプセル30内物質の双極子の振動によって発生する熱エネルギーでカプセルを溶融破壊させるようになっている。
【0085】この破壊により、封入された高濃度のNaOHが周囲の糊12に流出して急速に化学反応を起こし、NaOH濃度の高い糊12bとなり、より低い温度でゲル化が促進されるようになっている。なお、搬送部91において通常の綿ベルト14であっても十分絶縁が可能であるが、これに代わって、絶縁ベルトを用いてもよい。
【0086】本実施形態はこのように構成されているので、第1実施形態のものよりも簡素な構成によって、第1実施形態とほぼ同様に、NaOHを糊玉を生じさせることなく有効に利用できるようになり、装置の高速化を進めて生産性の向上を促進することができる。特に、熱板13Aと加圧ロール15の代わりに、高周波電界40を用いることによって、熱板13A,加圧ロール15などの装置が必要なくなり、ダブルフェーサ部80Bの装置を簡素化することができ、しかも、加圧ロール15の加重による段ボールシート19の変形も防ぐことができる。
【0087】また、高周波電界40を用いて、NaOH封入マイクロカプセル30を溶融破壊するので、より確実に糊12bを生成でき、短時間で接合が完了できる。
(F)その他なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でかかる実施形態を種々変更して実施しうるものである。
【0088】例えば、上述したマイクロカプセル30,35の粒子径は図1(b)の、水系/油系/水系エマルジョン27Bや、図4(b)の、水系/油系/水系エマルジョン32Bの粒径によって規定され、また、マイクロカプセル30,35の膜厚は図1で形成する微小液滴27a(水系/油系エマルジョン)と水系/油系/水系エマルジョン27B、あるいは、図4で形成する微小液滴32a(水系/油系エマルジョン)と水系/油系/水系エマルジョン32Bの粒径差に支配される。
【0089】したがって、マイクロカプセル30,35の径及び膜厚、さらにスチレン・アクリルの共重合比、分子量に支配される膜強度はマイクロカプセルの破壊条件に適したものとなるように調整すればよいことは言うまでもない。また、具体的なNaOHのマイクロカプセル化の手順、また使用材料などを限定するものではなく、他の手順、使用材料であってもNaOHのマイクロカプセル化が可能であれば何ら差し支えない。
【0090】さらに、封入するNaOHの純度、濃度、量、更にはマイクロカプセルの仕様(形状、寸法など)についても敢えて数値等を限定するものではないが、従来の糊中に含まれる割合と比較すると相対的に高濃度状態でNaOHを封じ込めるものである。また、NaOHのマイクロカプセルは糊の硬化速度向上や加熱温度低下のために澱粉糊中に加えるのであり、澱粉糊の中に通常量のNaOHが既に含まれていても良いことは言うまでもない。
【0091】さらに、NaOHマイクロカプセルの被膜は強度的には非常に弱く、被膜の破壊方法は、ここで圧力、温度、周波数などの数値を敢えて限定するものではなく、被膜が破壊されればどのような手段でも適用は可能である。
【0092】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本発明の紙製品の製造方法及び請求項4記載の製造装置では、紙を接合する際に、高濃度のNaOHが封入されたマイクロカプセルが混入された糊を塗布した後、このマイクロカプセルに刺激を与えて破壊することにより、糊玉を作ることなく、NaOH濃度の高い糊で紙を接合できるという利点がある。また、高濃度のNaOHが封入されたマイクロカプセル混入糊を用いるので、接合の際、糊のゲル化が急速に促進され、乾燥に必要な熱量が少なくて済むという利点がある。さらに、熱量を従来と同等にした場合には、紙製品の製造装置の速度アップができるので、従来の製造装置の仕様を変えることなく生産量のアップにつながるという利点がある。
【0093】また、請求項2記載の本発明の紙製品の製造方法及び請求項5記載の製造装置では、段ボールの中芯とライナとを接合する際に、高濃度のNaOHが封入されたマイクロカプセルが混入された糊を用いることにより、糊玉を作ることなく、NaOH濃度の高い糊で段ボールの中芯とライナとを接合でき、接合の際、糊のゲル化が急速に促進されるため、乾燥に必要な熱量が少なくて済むという利点がある。さらに、熱量を従来と同等にした場合には、製造装置の速度アップができるので、従来の段ボール製造装置の仕様を変えることなく生産量のアップにつながるという利点がある。
【0094】さらに、請求項3記載の本発明の紙製品の製造方法及び請求項6記載の製造装置によれば、圧力,熱,振動,音波,電界のいずれかによって刺激を与えることにより、接合の直前に確実にマイクロカプセルを破壊することができるという利点がある。また、破壊されたNaOH封入マイクロカプセルが周囲の糊と反応することによって、糊のゲル化をが急速に促進され、糊玉をより確実に防止でき、接合がより速く、確実に行われるという利点がある。
【0095】また、請求項7記載の本発明の紙接合用糊によれば、NaOHが高濃度に封入されたマイクロカプセルが混入されているため、糊のゲル化を促進させるNaOHが糊全体と化学反応を起こさずに糊を紙に塗布でき、糊玉を防止できるという利点がある。また、請求項8及び10記載の本発明の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法によれば、水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、この水系/油系エマルジョンをNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンを形成する第2工程と、この水系/油系/水系エマルジョンを含むNaOH水溶液中に添加物を添加し、混合・攪拌することにより、水系/油系/水系エマルジョンの最外相のNaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面に薄膜を形成する第3工程と、形成された水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、水系/油系/水系エマルジョンのスチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にしてスチレン・アクリルモノマー相の内部にNaOHを封入する第4工程とから構成されているので、高濃度のNaOH水溶液を容易にマイクロカプセル化できるという利点がある。また、スチレン・アクリルモノマー相と最外相のNaOH水溶液との界面に薄膜を形成することによって、スチレン・アクリルモノマー相の重合膜にあるピンホール状の欠陥などによって、封入したNaOHが外部へしみ出す恐れを防止できるという利点もある。さらに、NaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンを形成した後に、添加物を添加していることから、確実に薄膜を形成することができるという利点がある。

【0096】さらに、請求項9及び11記載の本発明の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法によれば、水系/油系エマルジョンを形成する第1工程と、この水系/油系エマルジョンを添加物を添加したNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンであって、最外相のNaOH水溶液とスチレン・アクリルモノマー相との界面に薄膜を有するものを形成する第2工程と、形成された水系/油系/水系エマルジョンを加熱することによりスチレン・アクリルモノマーを重合反応させて、水系/油系/水系エマルジョンのスチレン・アクリルモノマー相を液相から固相にしてスチレン・アクリルモノマー相の内部にNaOHを封入する第3工程とから構成されているので、高濃度のNaOH水溶液を容易にマイクロカプセル化できるという利点がある。また、スチレン・アクリルモノマー相と最外相のNaOH水溶液との界面に薄膜を形成することによって、スチレン・アクリルモノマー相の重合膜にあるピンホール状の欠陥などによって、封入したNaOHが外部へしみ出す恐れを防止できるという利点もある。さらに、第1工程で形成された水系/油系エマルジョンを添加物を添加したNaOH水溶液中に添加し、混合・攪拌してNaOH水溶液/スチレン・アクリルモノマー/NaOH水溶液からなる水系/油系/水系エマルジョンであって最外相に薄膜を有するものを形成しているので、工程が簡素化できマイクロカプセル製造作業が容易になるという利点もある。

【0097】また、請求項12記載の本発明の紙接合用糊のマイクロカプセル製造方法によれば、第1工程開始時に、予め界面活性剤を添加したNaOH水溶液を重合開始剤と、セバコイシルジクロライド又はメチルセルロースを含むスチレン・アクリルモノマー中に添加し、混合・攪拌することによって、スチレン・アクリルモノマー中に水溶液の微小液滴を中心とした水系/油系エマルジョンを形成するように構成されているので、NaOH水溶液の微小液滴の径を容易に調整できたり、微小液滴の安定化を図ることができるという利点がある。

【図面の簡単な説明】

図1】本発明の第1実施形態としての紙製品の製造装置に設けられた糊付装置に用いられるNaOH封入マイクロカプセル製造方法を説明するための模式図であり、(a)はその第1工程を示し、(b)はその第2工程を示し、(c)はその第3工程を示し、(d)はその第4工程を示す。

図2】本発明の第1実施形態としての紙製品の製造装置に設けられたシングルフェーサ部を説明するための模式図である。

図3】本発明の第1実施形態としての紙製品の製造装置に設けられたダブルフェーサ部を説明するための模式図である。

図4】本発明の第2実施形態としての紙製品の製造装置に設けられた糊付装置に用いられるNaOH封入マイクロカプセル製造方法を説明するための模式図であり、(a)はその第1工程を示し、(b)はその第2工程を示し、(c)はその第3工程を示し、(d)はその第4工程を示す。

図5】本発明の第3実施形態としての紙製品の製造装置に設けられたシングルフェーサ部を説明するための模式図である。

図6】本発明の第4実施形態としての紙製品の製造装置に設けられたダブルフェーサ部を説明するための模式図である。

図7】本発明の第5実施形態としての紙製品の製造装置に設けられたダブルフェーサ部を説明するための模式図である。

図8】従来の紙製品の製造装置に設けられたシングルフェーサ部を説明するための模式図である。

図9】従来の紙製品の製造装置に設けられたダブルフェーサ部を説明するための模式図である。

図10】従来の紙製品の製造装置に設けられた糊付装置に用いられる糊の製造方法を説明するための模式図であり、(a)はその工程1を示し、(b)はその工程2を示し、(c)はその工程3を示す。

【符号の説明】1A,1B 段ロール、1C 成型部、1D,1E 段、2 圧力ロール、2a 表面、2A 接合部、3 裏ライナ、4 中芯、4′ 芯紙、4A,8A 頂部、4B 底部、5,10,5A,10A 糊付装置(塗布部)、5a,10a 容器、6A,6B,11A,11B 糊付ロール、6a,6b,11a,11b 周面、6C,11C,70,110 接触部、7,12 糊、7a,7b,12a,12b 糊(マイクロカプセル混入糊)、8 片段シート、8A 頂部、8B 面、9 表ライナ、13,13A 熱板、13a 上面、14 綿ベルト、14a 外面、14b 内面、15 加圧ロール、16,17,18 搬送ロール、19 段ボールシート(段ボール)、20,20A,20B 水、21,24 澱粉、21A ペースト状澱粉、21B,24A 溶液、22,27A,32A NaOH水溶液、22A NaOH、23 硼砂、26,31 スチレン・アクリルモノマー、26a セバコイシルジクロライド、27,32 芯物質(NaOH)、27a,32a 微小液滴、27B,32B 水系/油系/水系エマルジョン28 ヘキサメチレンジアミン、29 ナイロン薄膜、30,35 NaOH封入マイクロカプセル、31a メチルセルロース、33 タンニン、34 メチルセルロース薄膜、36,37 被膜破壊装置、38 格子電極、39 高周波電源、40 高周波電界、50a,50b,50c,50d スチレン・アクリルモノマー相、80,80A,80B シングルフェーサ部、90,90A,90B,90C ダブルフェーサ部、91 搬送部、92,92A,92B,92C 接合部、92a 接合開始部、92b 出側

図面】

図1

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図2

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図3

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図4

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図5

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図8

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図9

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図10

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Goback→ 目次

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3.2.2. 特開2001-097819:マイクロカプセル及びその製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】特開2001−97819(P2001−97819A)

(43)【公開日】平成13年4月10日(2001.4.10)

(54)【発明の名称】マイクロカプセル及びその製造方法

(51)【国際特許分類第7版】A61K 7/00、7/021、7/025、7/031、7/38、7/48、B01J 13/06

【FI】A61K 7/00 T、J、K、L、M、N、S、V、7/021、7/025、7/031、7/38、7/48、B01J 13/02 E

【審査請求】未請求

【請求項の数】14

【出願形態】OL

【全頁数】16

(21)【出願番号】特願2000−89743(P2000−89743)

(22)【出願日】平成12年3月28日(2000.3.28)

(31)【優先権主張番号】特願平11−212373

(32)【優先日】平成11年7月27日(1999.7.27)

(33)【優先権主張国】日本(JP)

(71)【出願人】

【識別番号】000001959

【氏名又は名称】株式会社資生堂

住所又は居所】東京都中央区銀座7丁目5番5号

(72)【発明者】

【氏名】宮沢 和之

【住所又は居所】神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂第一リサーチセンター内

(72)【発明者】

【氏名】金田 勇

【住所又は居所】神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂第一リサーチセンター内

(72)【発明者】

【氏名】梁木 利男

【住所又は居所】神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂第一リサーチセンター内

(74)【代理人】

【識別番号】100092901

【弁理士】

【氏名又は名称】岩橋 祐司

【テーマコード(参考)】

4C083

4G005

【Fターム(参考)】

4C083 AD211 AD351 BB04 CC02 CC04 CC05 CC07 CC12 CC13 CC17 DD08 DD12 DD14 DD21 DD23 DD31 DD34 DD41 EE12

4G005 AA01 AB09 AB14 AB15 AB17 AB21 AB30 BB06 BB13 DA09X DA09Z DB06X DB06Z DB08X DB08Z DB09X DB09Z DB12X DB12Z DB13X DB13Z DB14X DB14Z DB17X DB17Z DB22X DB27W DB27X DC02X DC15X DC18W DC26X DD47Z DD59X DD59Z DE08X DE08Z EA01 EA03

(57)【要約】(修正有)

【課題】 製造が簡便且つ効率的で、また、マイクロカプセルの粒径を幅広い範囲で容易にコントロールでき、しかもマイクロカプセルの安定性、使用感が良好で、塗布後には内包油滴が徐放されるマイクロカプセル及びその製造方法を提供する。

【解決手段】 平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つカプセル化剤が親水性高分子ゲル化剤であり、カプセルの破断強度が500〜2,000g/cmであることを特徴とするマイクロカプセル。本発明のマイクロカプセルは、内油相と、親水性高分子ゲル化剤を含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、前記O/Wエマルジョンを外油相3中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンを調製し、前記O/W/Oエマルジョンの水相を固化させて得られる。

【特許請求の範囲】

【請求項1】 平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つカプセル化剤が親水性高分子ゲル化剤であり、カプセルの破断強度が500〜2,000g/cmであることを特徴とするマイクロカプセル

【請求項2】 請求項1記載のマイクロカプセルにおいて、カプセル化剤の主成分が、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤であることを特徴とするマイクロカプセル

【請求項3】 請求項1又は2記載のマイクロカプセルにおいて、親水性高分子ゲル化剤が寒天であることを特徴とするマイクロカプセル

【請求項4】 請求項1又は2記載のマイクロカプセルにおいて、親水性高分子ゲル化剤がカラギーナンであることを特徴とするマイクロカプセル

【請求項5】 請求項1〜4の何れかに記載のマイクロカプセルにおいて、マイクロカプセルが親水性非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒とを含むことを特徴とするマイクロカプセル

【請求項6】 請求項1〜5の何れかに記載のマイクロカプセルが、油相中に分散していること特徴とするマイクロカプセル油性分散物。

【請求項7】 請求項6記載のマイクロカプセル油性分散物において、内油相と、親水性高分子ゲル化剤を含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、前記O/Wエマルジョンを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンを調製し、前記O/W/Oエマルジョンの水相を固化させて得られることを特徴とするマイクロカプセル油性分散物。

【請求項8】 請求項7記載のマイクロカプセル油性分散物において、前記O/Wエマルジョンが、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、該水溶性溶媒中油型エマルジョンに親水性高分子ゲル化剤の水溶液を添加して調製されるO/Wエマルジョンであることを特徴とするマイクロカプセル油性分散物。

【請求項9】 請求項1〜5の何れかに記載のマイクロカプセルにおいて、請求項7又は8の何れかに記載のマイクロカプセル油性分散物の外油相を除去して得られることを特徴とするマイクロカプセル

【請求項10】 請求項1〜9の何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物において、カプセル内に油性薬剤を含有することを特徴とするマイクロカプセル又はその油性分散物。

【請求項11】 請求項1〜9の何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配したことを特徴とする化粧料。

【請求項12】 請求項1〜9の何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とする固形化粧料。

【請求項13】 内油相と、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め加熱溶解しておいた水相とから、該ゲル化剤の固化温度以上で平均粒子径が0.01〜3μmのO/Wエマルジョンを調製するO/Wエマルジョン調製工程と、前記O/Wエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以上で外油相中に分散乳化するO/W/Oエマルジョン調製工程と、前記O/W/Oエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以下に冷却して水相を固化するカプセル化工程と、を備え、前記水相から調製されるゲルの破断強度が500〜2,000g/cmであることを特徴とするマイクロカプセル製造方法。

【請求項14】 請求項13記載の製造方法において、O/Wエマルジョン調製工程が、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相成分を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、該水溶性溶媒中油型エマルジョンと、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め加熱溶解しておいた水溶液とを該ゲル化剤の固化温度以上で混合する工程を含むことを特徴とするマイクロカプセル製造方法。

【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロカプセル、特にカプセルの安定性、使用感、内包油滴の放出性の改良に関する。

【0002】

【従来の技術】カプセル中に内包油滴を有するマイクロカプセルは、食品、医薬品、化粧品等の分野で検討され、例えば、カプセル内に薬剤を内包して配合することにより、製品中での薬剤の安定性を改善しようとする試みがなされている。マイクロカプセル製造方法としては、内包油滴となる油相と、カプセル化剤を含む水相とからO/Wエマルジョンを調製し、このエマルジョンを微粒子に成形、カプセル化する方法がある。例えば、O/Wエマルジョンをさらに外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンとし、水相を硬化させてカプセル化する方法、O/Wエマルジョンを空気中で噴霧しながら硬化させるスプレークーリング、O/Wエマルジョンをノズルから滴下して気体中あるいは液体中で硬化させる滴下法などがある。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、通常の乳化方法ではO/Wエマルジョンの乳化粒子を1μm以下とすることは困難であり、例え1μm以下の乳化粒子径を持つO/Wエマルジョンができたとしてもその安定性が十分でないため、その後の工程で油滴同士が融合し、マイクロカプセルの内包油滴径が大きくなってしまう傾向がある。そして、このような場合、内包油滴のカプセル化効率を上げるためにマイクロカプセル径を大きくせざるを得ないという問題があった。

【0004】特に、O/W/Oエマルジョンを経由する方法では、O/Wエマルジョンがさらに外油相に分散乳化されるので、内包油滴同士の融合に加えて内包油滴と外油相の合一が起こりやすい。このため、O/W/O乳化の際に温度や攪拌速度が制限され、マイクロカプセルの粒径のコントロールが非常に難しく、また、得られたマイクロカプセルの安定性も十分でないという問題があった。また、製造時の内油相のロスを抑制することも望まれていた。

【0005】さらに、他の基剤に配合した場合のマイクロカプセルの安定性や、肌上での使用感、内包油滴の放出性も重要である。例えば、乳液やクリームなど粘性媒体中で高速攪拌して得られるような製品においては、その製造工程にマイクロカプセルを添加するとカプセルが破壊されやすい。このような製品の製造工程中でもカプセルが壊れず、しかも、肌上にのばして塗布するとカプセルから内包油滴が徐放されるようなマイクロカプセルを得ることは、これまで非常に困難であった。

【0006】例えば、特開平9−255562号公報には、水相に親水性高分子、外油相に有機変性粘土鉱物を配合したO/W/Oエマルジョンが報告されているが、このような場合でもO/W/Oエマルジョンからカプセルを固形分として取り出し、あるいは油性分散物のまま、他の基剤と一緒に仕込んで製品とする場合には、製品の製造工程中での機械的剪断やベース組成の変化によりカプセルが壊れてしまうことがあった。

【0007】本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、一つには、他の基剤に配合して製品化した場合でもマイクロカプセルが壊れず、保存安定性も良好で、しかも塗布した際には使用感が良好で内包油滴が徐放されるマイクロカプセルを提供することであり、一つにはこのようなマイクロカプセルを、簡便且つ効率的に製造でき、しかも、カプセル粒径を幅広い範囲で容易にコントロールできるマイクロカプセル製造方法を提供することにある。

【0008】

【課題を解決するための手段】前記従来技術の課題に鑑み、本発明者らが検討を行った結果、親水性高分子ゲル化剤をカプセルの破断強度が特定の範囲となるように用いたマイクロカプセルにおいて、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明にかかるマイクロカプセルは、平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つカプセル化剤が親水性高分子ゲル化剤であり、カプセルの破断強度が500〜2,000g/cmであることを特徴とする。

【0009】本発明において、カプセル化剤の主成分が、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤であることが好適であり、また、親水性高分子ゲル化剤が寒天又はカラギーナンであることが好適である。また、本発明において、マイクロカプセルが親水性非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒とを含むことが好適である。また、本発明にかかるマイクロカプセル油性分散物は、前記何れかに記載のマイクロカプセルが、油相中に分散していること特徴とする。

【0010】本発明のマイクロカプセル油性分散物において、内油相と、親水性高分子ゲル化剤を含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、前記O/Wエマルジョンを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンを調製し、前記O/W/Oエマルジョンの水相を固化させて得られることが好適である。また、前記O/Wエマルジョンが、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、該水溶性溶媒中油型エマルジョンに、親水性高分子ゲル化剤の水溶液を添加して調製されるO/Wエマルジョンであることが好適である。

【0011】また、本発明のマイクロカプセルは、前記何れかに記載のマイクロカプセル油性分散物の外油相を除去して得られるものであることが好適である。また、本発明のマイクロカプセル又はその油性分散物において、カプセル内に油性薬剤を含有することが好適である。また、本発明にかかる化粧料は、前記何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とする。また、本発明にかかる固形化粧料は、前記何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とする。

【0012】また、本発明にかかるマイクロカプセル製造方法は、内油相と、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め加熱溶解しておいた水相とから、該ゲル化剤の固化温度以上で平均粒子径が0.01〜3μmのO/Wエマルジョンを調製するO/Wエマルジョン調製工程と、前記O/Wエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以上で外油相中に分散乳化するO/W/Oエマルジョン調製工程と、前記O/W/Oエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以下に冷却して水相を固化するカプセル化工程と、を備え、前記水相から調製されるゲルの破断強度が500〜2,000g/cmであることを特徴とする。また、前記製造方法において、O/Wエマルジョン調製工程が、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相成分を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、該水溶性溶媒中油型エマルジョンと、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め加熱溶解しておいた水溶液とを該ゲル化剤の固化温度以上で混合する工程を含むことが好適である。

【0013】

【発明の実施の形態】本発明のマイクロカプセルは、内包油滴となる内油相と、親水性高分子ゲル化剤を含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、これを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンとし、O/W/Oエマルジョンの水相を固化してカプセル化することにより得ることができる。図1は、本発明のマイクロカプセルの概念図であり、マイクロカプセル2内には、内包油滴(内油相)1を有している。

【0014】親水性高分子ゲル化剤としては、化粧品や医薬品等において通常使用されるもので、固化して親水性のゲルを形成できるものが挙げられる。例えば、ゼラチン、コラーゲン等のタンパク質、寒天、カラギーナン、グルコマンナン、スクレログルカン、シゾフィラン、ジェランガム、アルギン酸、カードラン、ペクチン、ヒアルロン酸、グアーガム等の多糖類が挙げられる。これらのうち、寒天、カラギーナンなどの加熱冷却により固化してゲルを形成するものは、イオンの影響を受けにくく、また製法が簡便で均一に固化できるという点で好ましい。本発明においては、このような加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤をカプセル化剤の主成分とすることが好適である。中でも、ゲルの性質、安定性、使用感等の点から、寒天、カラギーナンが好ましく、特に好ましくは寒天である。寒天としては、例えば、伊那寒天PS−84、Z−10、AX−30、AX−100、AX−200、T−1、S−5、M−7(伊那食品工業社製)等の市販品を用いることができる。本発明においては、親水性高分子ゲル化剤の2種以上を併用してもよい。加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤と共に、アルギン酸やカードラン、ヒアルロン酸等のように、Ca等のイオンや、その他の凝固剤により固化する親水性高分子ゲル化剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することも可能である。

【0015】また、必要に応じてその他の親水性高分子、例えば、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースをはじめとする合成高分子や、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の天然高分子を本発明の効果を損なわない範囲で配合することも可能である。特に、ケルトロールを寒天と併用すると、カプセルが軟らかくなる傾向がある。水相としては、水の他、水に溶解又は分散可能な成分や薬剤を配合することもできる。